研究課題/領域番号 |
19H05626
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 浩 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (00226250)
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研究分担者 |
戸谷 吉博 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70582162)
堀之内 貴明 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60610988)
鈴木 宏明 中央大学, 理工学部, 教授 (20372427)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 代謝工学 / ゲノムスケールモデル / 指向性進化 / ロボット / マイクロリアクタ |
研究実績の概要 |
微生物は細胞内に複雑に相互作用する多数の代謝反応を持つため、目的物質生産のために代謝を最適化するのは容易なことではない。本研究では、微生物代謝を統一的に理解し、合理的にデザインできる代謝工学を確立することを目的としている。有用物質生産の宿主微生物である大腸菌について、様々な炭素源、異なる前駆体から合成される目的物質を設定することで、代謝経路の律速点を網羅的に抽出するための研究を行う。中枢代謝の主要な経路のフラックスを増加するための原理を抽出し、代謝を自在に操る手法を確立することを目指す。すなわち、ゲノムスケールモデルを用い、細胞増殖と目的物質の生産が連動するように代謝経路をデザインする。また、ロボットを用いて継代培養を行い、増殖速度が上昇し代謝の律速点が解消された進化株を取得する。さらに、マイクロ流路を用いた多系列連続培養系を開発し、系列数と選択圧の種類を増やすことで、微生物の進化プロセスを多次元化する。得られた進化株のゲノム解析や代謝解析を行い、親株からどのように代謝が遷移したのかを明らかにする。得られた知見をもとに代謝を自在に変化させ、有用物質生産株を構築する手法を確立する。 本年度は、ゲノムスケール代謝モデルを利用し目的物質を生産する大腸菌の代謝経路のin silicoデザインを行った。フラックスバランス解析法を用いて、細胞増殖と目的物質の生産が連動するように代謝をデザインし、必要な代謝経路の導入、不要な経路の削除を行った。また二酸化炭素排出削減を目的として、非酸化的解糖経路や逆グリオキシル酸経路の導入を行った。ロボットを用いて、実験室進化を行うことによって、増殖速度が上昇した進化株を取得する方法,得られたデータの機械学習による解析方法の有用性について確認した。また、マイクロ流系において長期培養が可能なシステム構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ゲノムスケール代謝モデルを用いて有用物質生産のための基盤株をin silicoデザインし実際に構築した。また、ロボットを用いた実験室進化、機械学習による解析法の有効性が確認された。さらに、マイクロリアクタを開発し、長期培養が可能であることを確認した。以上の観点から研究は計画通りおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、得られた進化株の全ゲノム解析を行い、どのような変異が進化株に生じたのかを突き止める。ゲノム編集を用いて同定された変異を親株に導入し、増殖、物質生産、分子機能の関係を明らかにする。この情報を集積し、目的物質に適した代謝経路のデザイン、必要変異のデザインを可能とし、柔軟な物質生産菌の開発法を完成させる。
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