研究課題/領域番号 |
19H05628
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
緑川 克美 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, センター長 (40166070)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 量子エレクトロニクス / アト秒科学 / レーザー工学 / 超高速光科学 / 非線形光学 |
研究実績の概要 |
2019年度は、3μm帯でのサブ2サイクルパルスの発生の準備として、中赤外域におけるシード光の発生とDC-OPAをさらに発展させたDual-Pump型DC-OPAを開発した。フロンエンドでは1kHz 25fs のチタンサファイアレーザーパルスをkrガスセルに集光し、フィラメンテーションにより発生した0.55から0.95μmにわたる広帯域光を圧縮後に,BiBO結晶を用いた差周波発生(DFG)により1.2から;2.2μmにわたる広帯域シード光(サブ2サイクルに相当)を発生させた。この方式では、自己DFGを用いる事により受動的にCEPが安定化される。得られた広帯域シード光は後段に設置されたAOPDFにより DC-OPAに最適化された分散量を付加される。2段のBiBO DC-OPAによって得られたエネルギーは40mJである。一方、1.6μmを中心にチャープ符号の異なるポンプパルスを用いる改良型(Dual Pump)DC-OPAを開発した。これにより増幅帯域が約2倍になりBBOでもサブ2サイクルパルスの増幅が可能となった。 新しい円偏光高次高調波の発生法の開発においては、DC-OPAの波長可変性を活して、2色の同軸逆回り円偏光の基本波による円偏光高次高調波発生法と波長可変レーザーを組み合わせることで、発生する円偏光高次高調波の光子エネルギーを制御し、30 -60 eV域の同一の円偏光状態を保持したままそのスペクトルを連続的に変化させることに成功した。実験では、OPAのポンプ光(800 nm)とシグナル光(1320-1450nm)をそれぞれ逆回りの円偏光にしたものを高次高調波発生に用いた。今回の発生法では、隣り合う次数の位置に左回りと右回りの円偏光高次高調波が発生することが知られており、測定されたスペクトルもその特徴が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンサファイアレーザーパルスをkrガスセルに集光し、フィラメンテーションにより発生した0.55から0.95μmにわたる広帯域光を圧縮後に,BiBO結晶を用いた差周波発生(DFG)により1.2から2.2μmにわたる広帯域シード光(サブ2サイクルに相当)を発生させた。この手法は、3μmでも有効である。また、チャープ符号の異なるポンプパルスを用いる改良型(Dual Pump)DC-OPAを開発し、増幅帯域を約2倍することに成功した。この結果、BBOでもサブ2サイクルパルスの増幅が可能となった。一方、新しい円偏光高次高調波の発生法の開発においては、DC-OPAの波長可変性を活して、2色の同軸逆回り円偏光の基本波による円偏光高次高調波発生法と波長可変レーザーを組み合わせることで、発生する円偏光高次高調波の光子エネルギーを制御し、30-60 eV域の同一の円偏光状態を保持したままそのスペクトルを連続的に変化させることに成功した。 以上、新型コロナウイルス感染症の拡大により、当初2019年度末までに納入予定の大型定盤の納入が2020年にずれ込み予定していた円偏光高調波発生のための実験開始が3ヵ月程度おくれたが、これに対処するために、予備実験を既設の定盤のスペースを利用して行い、ほぼ計画どおり進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、フェムト秒で高エネルギーの1.6μm帯レーザーにルーズフォーカス法を短波長域でより吸収の小さいHeガスを用いることにより炭素のK吸収端を含む”水の窓”領域で高エネルギーの高次高調波の発生を試みる。ガスセルは二重構造の差動排気系にパルスバルブを用いることにより、真空チャンバー内へのガスの流出量を軽減する。これによって、これまでの定圧セルにくらべて数倍の高圧動作が可能になり、Heガスにおいても位相整合条件を満たすことができる。さらに、発生した高次高調波を、炭素を含む薄膜ポリマーに照射し、X線吸収端近傍スペクトルの測定を行い、今後に実験に必要なフォトン数を見積もる。一方、新しい円偏光高次高調波の発生法の開発においては、2019年度に行った円偏光スペクトルの解析を行い、その制御性や短波長化の可能性について検討する。
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