研究課題/領域番号 |
19H05635
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
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研究分担者 |
水畑 吉行 京都大学, 化学研究所, 准教授 (30437264)
行本 万里子 京都大学, 化学研究所, 助教 (70822964)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | アリールアニオン / 芳香族化合物 / 高周期元素 / 典型元素 / 拡張パイ電子系 |
研究実績の概要 |
これまで合成を達成した重いアリールアニオンは、第4,5周期元素であるGe, Snの系に限られていた。一方、第2周期元素化学との接点となる第3周期元素Siの導入は極めて重要である。そこでまず、Ge, Snの系に倣い、Tbt基を有するシラベンゼンと還元剤との反応を行った。しかし予想に反して、期待した置換基の脱離反応は進行せず、置換基からのプロトン引き抜き反応が進行したジアニオン化合物を与えた。理論計算を用いた考察により、SiとGeのわずかな結合長の違いが、置換基水素との空間的接近の度合いを変え、より近接したSiの系で脱プロトン化反応が優先したと考えられる。 シラベンゼニルアニオン合成実現のため、反応活性なベンジルプロトンを持たない置換基であるEind基を用いたシラベンゼンの合成を行った(近畿大学松尾司教授との共同研究)。得られたシラベンゼンに対し、還元剤を作用させたところ、想定通り置換基の脱離反応は進行したが、得られた化合物は反応初期に生成したシラベンゼニルアニオンがSi間で縮合環化したと考えられるポリアニオンであった。理論計算による考察の結果、シラベンゼニルアニオンのHOMOおよびHOMO-1の軌道は、対応するGeおよびSnの系のものとは入れ替わり、そのHOMOおよびLUMOはSi二価化学種シリレンのものと一致する。このことから、Siの系ではより二価化学種としての性質が強く顕れ、多量化反応が進行したものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで合成が達成されていなかったケイ素類縁体の合成を検討し、ゲルマニウム、スズと同様の手法・置換基ではその合成が困難であり、想定外のジアニオン種が生成することを見いだした。一方で、その問題点を新たな置換基導入によって解決可能であることを示したが、ケイ素類縁体においては、そのケイ素二価化学種性が強く顕れ本質的に反応活性であり、容易に多量化反応が進行することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
特に重いアリールアニオン類の立体保護基を用いない別途合成法の開発に注力する。特に前駆体合成が比較的容易なナフタレン骨格における別途合成法に注力して検討を行う。その骨格原料となるジアニオン等価体は、これまで検討してきたベンゼン骨格のものに比べて取り扱い易く、実現可能性は高いと考えている。これまでの検討結果も踏まえ、ルイス塩基により配位安定化を受けた二価化学種の活用、または四価の安定骨格を経由する手法などを検討する。
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