研究課題
本研究では栄養感知の分子機構の解明と感知に伴って起こる現象の普遍的な解析を(1)細胞内、(2)細胞膜、(3)細胞壁の3つコンパートメントごとに進めきている。本年度の成果の概略を記す。(1)細胞内感知機構の構造的理解としてはリボソーム構造解析の結果に基づき、翻訳停止プロセスで起こる反応についてのホウ素の影響について生化学解析を進めたところ、ホウ素濃度がAUGUAA上で停止したリボソームにおけるアミノアシルtRNAの分解に影響を及ぼすことが明らかになった。また、ホウ素依存的なAUGUAA配列での翻訳停止現象に異常を示す変異株については原因遺伝子を明らかにし、当該遺伝子のコードするタンパク質と翻訳反応、mRNA分解反応との関係を解析した。その結果原因遺伝子の一つがAUGUAAを持つmRNA上で停止したリボソームの周辺でmRNAを切断する可能性を持っていることを明らかにした。また、翻訳制御に伴って分解されるmRNAの分解断片の役割についても検討を行った。細胞内のホウ素濃度によって翻訳制御を受けるNIP5;1遺伝子は転写もホウ素で影響されることが明らかになり、さらにこの転写制御にmRNAの分解断片が関与している可能性が明らかになった。(2)細胞膜:細胞膜に局在するホウ素輸送体BOR1はホウ素濃度が高まると細胞内に選択的に取り込まれ分解される。昨年度までのBOR1変異タンパク質のホウ素条件に応じた蓄積変化の観察に加えて、BOR1と相互作用するタンパク質を解析するための各種系統などの整備を進めた。(3)細胞壁:ホウ素欠乏での生育が野生型よりも優れた複数のシロイヌナズナ変異株について、ペクチン含量等に異常があることが見出されている。本年度は昨年度までに解析が進んでいなかった変異株について、原因遺伝子やその遺伝子産物の機能についての推定を進めた。
2: おおむね順調に進展している
3つのそれぞれの区画の研究について新たな知見が得られており、また論文発表も進んでおり、概ね順調に進展していると考えている。
当初の計画に従って研究を進めていく予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (6件)
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