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2020 年度 実績報告書

真菌における一酸化窒素の統合的理解と育種・創薬への応用

研究課題

研究課題/領域番号 19H05639
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

高木 博史  奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (50275088)

研究分担者 萩原 大祐  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20612203)
渡辺 大輔  京都大学, 農学研究科, 准教授 (30527148)
高谷 直樹  筑波大学, 生命環境系, 教授 (50282322)
那須野 亮  奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (90708116)
西村 明  奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30781728)
研究期間 (年度) 2019-06-26 – 2024-03-31
キーワード一酸化窒素 / 酵母 / 糸状菌 / 合成制御機構 / 生理機能
研究実績の概要

1.酵母におけるNOの分子機能の解明
前年度に、酵母のNO耐性に寄与する新たな遺伝子として、リボフラビン合成の初発酵素であるGTP cyclohydrolase II(GCH2)をコードするRIB1を同定し、組換え酵素を用いた生化学的解析等の結果、GCH2の活性によって生成する代謝中間体2,5-diamino-6-(5-phospo-d-ribosylamino)-pyrimidin-4(3H)-one(DARP)がNOを消去することを明らかにした。今年度は、DARPのピリミジン部位に相当する2,4,5-triamino-6-hydroxy-pyrimidinineの添加により、蛍光強度の上昇が抑制されたことから、DARPがそのピリミジン部位によりNOと反応して分解することで、酵母のNO耐性に寄与することを明らかにした。また、酵母や糸状菌では溶性グアニル酸シクラーゼのオルソログが保存されていないため、NOの生理機能の発現にはタンパク質の翻訳後修飾が重要だと考えられる。そこで、NO依存的に翻訳後修飾を受けるタンパク質をプロテオーム解析により網羅的に同定した。その結果、解糖系のピルビン酸脱炭酸酵素Pdc1やグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素Tdh3がニトロ化されることを見出し、これらの酵素活性がニトロ化により抑制されることも明らかにした。
2.糸状菌におけるNOの分子機能の解明
前年度に、麹菌A. oryzaeの転写因子を対象に、NOドナーに対して生育が低下する株を探索した結果、エルゴステロール合成系の制御や低酸素応答に重要な転写因子(SrbA、AtrR)が候補として見出された。今年度は、A. fumigatusにおいてもSrbAとAtrRの各遺伝子破壊株で、NOドナーに対する生育低下が見られたことから、これら2つの転写因子が糸状菌のNO応答に重要な機能を有していることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NO依存的にニトロ化の翻訳後修飾を受ける酵母のタンパク質を多数同定し、その修飾部位も明らかにした。また、解糖系酵素のPdc1やTdh3の活性がニトロ化で阻害されることが判明した。今後、これらの翻訳後修飾が生理機能(ストレス耐性・発酵能など)に及ぼす影響を解析するが、多数の候補タンパク質を見出し、これらの翻訳後修飾の分子機能が明らかになりつつあることから、研究は順調に進展している。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。また、前年度に酵母のNO耐性機構として見出したGCH2依存的な機構は学術的に極めて価値があり、RIB1遺伝子は哺乳類には保存されていないことから、GCH2は新たな抗真菌薬の標的となり得る。糸状菌についても、病原性に重要な転写因子(SrbA, AtrR)は、低酸素応答や薬剤応答に中心的機能を果たしているが、NO応答への関与は報告がない。感染機構を統合的に理解する上で重要な発見であり、NOの生理機能への理解に資するものである。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

1.酵母におけるNOの分子機能の解明
前年度にオキシゲナーゼ候補として同定したErg11を酵母からアフィニティータグ融合タンパク質として精製し、還元酵素として組換え精製Tah18を用いin vitroにてNO合成活性を解析する。また、これまでに同定したニトロ化タンパク質の内、Pdc1やTdh3については、ニトロ化の生理機能を明らかにするために、修飾チロシン残基のフェニルアラニン置換体発現株の表現型を評価する。さらに、本研究で見出したNO関連遺伝子の発現改変株およびNO依存的に翻訳後修飾を受ける解糖系酵素の野生型・変異型遺伝子発現株をそれぞれ作製し、NOが生理特性および発酵特性に及ぼす影響を明らかにする。
2.糸状菌におけるNOの分子機能の解明
糸状菌で見出した天然抗菌物質に応答したNO産生の分子機構およびその生理機能について、遺伝子破壊株を作製し、分子遺伝学的手法により迫るとともに、病原菌の感染実験を実施する。また、創薬に資する多様なケミカルスペースの拡充に向け、NO処理による糸状菌の休眠二次代謝の覚醒を検討する。さらに、麹菌ライブラリーから見出したSrbAおよびAtrRの機能解析を進め、新たなNO耐性機構の解明を目指すとともに、薬剤標的として有望な低酸素応答機構との関連性を重点的に検討する。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] The analytical method to identify the nitrogen source for nitric oxide synthesis2021

    • 著者名/発表者名
      Ryo Nasuno, Yuki Yoshikawa, Hiroshi Takagi
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 85 ページ: 211-214

    • DOI

      10.1093/bbb/zbaa046

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A novel mechanism for nitrosative stress tolerance dependent on GTP cyclohydrolase II activity involved in riboflavin synthesis of yeast2020

    • 著者名/発表者名
      Khairul Anam, Ryo Nasuno, Hiroshi Takagi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 6015

    • DOI

      10.1038/s41598-020-62890-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Detection system of the intracellular nitric oxide in yeast by HPLC with a fluorescence detector2020

    • 著者名/発表者名
      Ryo Nasuno, Seiya Shino, Yuki Yoshikawa, Natsuko Yoshioka, Yuichi Sato, Kohei Kamiya, Hiroshi Takagi
    • 雑誌名

      Analytical Biochemistry

      巻: 598 ページ: 113707

    • DOI

      10.1016/j.ab.2020.113707

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 酵母のストレス耐性に関する新規な分子機構と高機能開発2021

    • 著者名/発表者名
      高木博史
    • 学会等名
      日本農芸化学会2021年度大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける翻訳後修飾を介した一酸化窒素の生理的役割の解明2021

    • 著者名/発表者名
      示野誠也、那須野 亮、高木博史
    • 学会等名
      日本農芸化学会2021年度大会
  • [学会発表] タンパク質チロシン残基ニトロ化修飾の消去酵素 denitrase の探索と解析2021

    • 著者名/発表者名
      那須野 亮、高木博史
    • 学会等名
      日本農芸化学会2021年度大会
  • [学会発表] Aspergillus nidulansにおける一酸化窒素ストレス誘導型グリセロアルデヒ-3-リン酸デヒドロゲナーゼGpdCの機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      門岡千尋、鈴木康太、桝尾俊介、高谷直樹
    • 学会等名
      日本農芸化学会2021年度大会
  • [学会発表] NADPH量が制限された酵母細胞内における過酸化水素および一酸化窒素ストレス耐性機構2020

    • 著者名/発表者名
      吉川雄樹、那須野 亮、高木博史
    • 学会等名
      第93回日本生化学会大会
  • [学会発表] リボフラビン合成系酵素GTP シクロヒドロラーゼII 依存的な新しい一酸化窒素耐性機構2020

    • 著者名/発表者名
      那須野 亮、Anam Khairul、高木博史
    • 学会等名
      第73回日本酸化ストレス学会・第20回日本NO学会合同学術集会
  • [学会発表] 酵母の過酸化水素および一酸化窒素に対する防御機構と細胞内NADPHとの関連性の解析2020

    • 著者名/発表者名
      吉川雄樹、那須野 亮、高木博史
    • 学会等名
      第73回日本酸化ストレス学会・第20回日本NO学会合同学術集会
  • [学会発表] 酵母におけるタンパク質のS-グルタチオン化修飾の生理機能の解析2020

    • 著者名/発表者名
      示野誠也、那須野 亮、高木博史
    • 学会等名
      第73回日本酸化ストレス学会・第20回日本NO学会合同学術集会
  • [学会発表] 酵母のストレス耐性に関する新規な分子機構と高機能開発2020

    • 著者名/発表者名
      高木博史
    • 学会等名
      日本農芸化学会関西支部例会(第513回講演会)
    • 招待講演
  • [学会発表] 糸状菌Aspergillus nidulansの一酸化窒素耐性に関わるシトクロムP450の機能解析2020

    • 著者名/発表者名
      鈴木康太、門岡千尋、桝尾俊介、高谷直樹
    • 学会等名
      糸状菌分子生物学研究会第8回若手の会ワークショップ
  • [学会発表] Aspergillus nidulansにおける一酸化窒素ストレス誘導型グリセロアルデヒ-3-リン酸デヒドロゲナーゼGpdCの機能解析2020

    • 著者名/発表者名
      3門岡千尋、鈴木康太、桝尾俊介、高谷直樹
    • 学会等名
      糸状菌分子生物学研究会第8回若手の会ワークショップ
  • [学会発表] 植物由来精油成分に対する糸状菌Aspergillus fumigatusの応答機構2020

    • 著者名/発表者名
      老木紗予子、二宮章洋、浦山俊一、萩原大祐
    • 学会等名
      糸状菌分子生物学研究会第8回若手の会ワークショップ

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公開日: 2022-12-28  

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