研究課題/領域番号 |
19H05642
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大木 研一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50332622)
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研究分担者 |
松井 鉄平 岡山大学, 自然科学学域, 研究教授 (10725948)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 視覚野 / イメージング / 光遺伝学 / 神経回路 / 情報処理 |
研究実績の概要 |
動物が新規図形を学習しているときの高次視覚野の神経細胞の反応性の変化を継時的に観察した。マウスに新規図形のペア(報酬刺激=L字図形と、無報酬刺激=逆L字図形)を提示し、マウスの口先から少し話したところに水の吸い口を設置し、報酬刺激を提示しているときに舌を出すと水が貰え、無報酬刺激を提示しているときは貰えないというタスクを学習させた。このタスクを学習しているときの視覚野の視覚応答の変化を継時的に観察した。報酬刺激と無報酬刺激に対する視覚野での応答パターンを比較すると、視覚野の一部の領域で報酬刺激に対する応答が大きかった。これらの活動パターンを基にして、刺激に対するマウスの行動を予測することができた。従って、視覚野における報酬刺激と無報酬刺激の応答差を基にして課題を遂行している可能性が示唆された。さらに、視覚野以外に、脳梁膨大後部皮質、体性感覚野、運動野などでも、行動応答を示した場合には、神経活動が増大することが分かった。 この視覚野における報酬刺激と無報酬刺激間での応答の差が学習の前後でどのように変化するのかを調べるために、学習前と学習後の神経活動を広域カルシウムイメージングにより記録した。学習初日では報酬刺激、無報酬刺激への応答パターンが比較的似ており、応答差がわずかであるが、学習過程で無報酬刺激への応答が抑制されることにより応答差が増大した。この結果から学習過程では必要な情報は維持されつつ、不要な情報が抑制されることが示唆された。このことは、新規図形の学習に伴って、スパースな表現様式に変化が起こるのではないかと仮説とも合致し、学習によるスパース化を支持する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、研究が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、動物が新規図形を学習しているときの高次視覚野の神経細胞の反応性の変化を継時的に観察した。マウスに新規図形のペア(図形A、B)を提示し、マウスの口先から少し話したところに水の吸い口を設置し、図形Aを提示しているときに舌を出すと水が貰え、図形Bを提示しているときは貰えないというタスクを学習させ、このタスクを学習しているときの視覚野の反応性の変化を継時的に観察したところ、報酬と結びついた図形に対する反応が変化しないのに対して、報酬と結びつかない図形に対する反応が低下していき、図形間の反応の差が拡大してくことが観察された。反応の差が拡大は、視覚野全体に今後は、この反応の差が拡大する領域を用いて、動物がどちらの刺激を見ているのかdecodingを行い、学習中のdecodingの成績が、動物の成績と相関するかどうかを調べる。また、全脳の神経活動を計測しつつ脳の任意の場所を局所的に不活性化する方法を開発し、どの部位を不活性化したときに課題成績への影響が大きいかをマッピングし、課題成績への影響が大きい場所と、反応の差が拡大した領域が対応するかどうかを調べる。
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