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2022 年度 実績報告書

多様な紡錘体形成マシナリーの統合的解析と次世代型分裂期阻害剤の創生

研究課題

研究課題/領域番号 19H05651
研究機関東京大学

研究代表者

北川 大樹  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (80605725)

研究分担者 知念 拓実  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (40775607)
研究期間 (年度) 2019-06-26 – 2024-03-31
キーワード中心体 / 細胞分裂 / 抗がん薬開発 / 分裂期紡錘体
研究実績の概要

これまでに、中心体が存在しないヒトがん細胞において、紡錘体極形成因子であるNuMAが相分離を介して、凝集体を形成し、分裂期紡錘体の形成を促進していることを明らかにしてきた(EMBO(2020), JCB(2021))。今年度は、中心体が存在するヒトがん細胞においても、分裂期を標的とする抗がん薬であるタキソールを処理することで、NuMAに依存して異所的な紡錘体極形成が誘起され、多極紡錘体が形成されることを発見した。これまでに、タキソールが示す抗がん活性として、多極紡錘体形成から生じる細胞死が有効な作用点であることが示されていたが、その分子機構は明らかにされていなかった。タキソールを処理した際に生じる極構造の形成プロセスを解析したところ、NuMAが天然変性領域を介して相分離し、凝集することで紡錘体極として働くことが示された。高解像度の顕微鏡観察、ライブイメージングの結果から、核膜崩壊による環境変化、タキソールによる微小管ダイナミクスの低下が、NuMAの凝集特性の制御に関与していることが示唆された。以上により、タキソールはNuMAの相分離様凝集を介して、紡錘体極を形成させ、多極紡錘体形成を誘導することを見出した。本研究成果は、ヒトがん細胞の分裂阻害の全く新しいストラテジーを提示するものであり、今後の分裂期作用薬の開発に有用な知見を提供し得る。さらに、今年度は、CRISPR-Cas9を用いた新しいヒト培養細胞のゲノム編集技術を開発した(JCS (2023))。この技術を駆使して内在性の遺伝子を改変することで、中心体や分裂期紡錘体における分子機能解析をより厳密に行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の主眼の一つである新しい抗がんストラテジーの開発に向けて、タキソールの作用機序の解析を細胞生物学的に行い、新しい作用点の導出に至った。この研究成果は、中心体と協調的に作動する紡錘体形成マシナリーの解析を発端としており、独自性がある。また、デュアルキナーゼ阻害による抗がんストラテジーの開発や、中心体複製や形成に関する研究も同時に展開しており、研究計画全体として順調に進展していると判断している。

今後の研究の推進方策

最終年度においては、国際的にもリードしている中心体関連研究に加えて、以下の項目により力点をおいて研究を推進する。

中心体非依存的な紡錘体形成に寄与するキナーゼを同定し、このキナーゼに対する特異的阻害薬とPlk4阻害薬の併用が、がん細胞の増殖や分裂期紡錘体形成を抑制するか検討を行い、分裂期紡錘体を完全に抑制するストラテジーを創出する。血液がん細胞を含む複数のがん細胞株でその検討を行う。

ヒト慢性骨髄性白血病(K562細胞)やリンパ腫(RAJI細胞)を含む血液がん細胞では、中心体除去により紡錘体形成と細胞分裂が著しく抑制されることを発見している。細胞生物学的解析と細胞遺伝学スクリーニングを組み合わせることで、血液がん細胞が特異的に有する中心体依存性の高い紡錘体形成機構と、それを効果的に阻害する抗がんストラテジーの開発を行う。

  • 研究成果

    (28件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A CRISPR-del-based pipeline for complete gene knockout in human diploid cells2023

    • 著者名/発表者名
      Komori Takuma、Hata Shoji、Mabuchi Akira、Genova Mariya、Harada Tomoki、Fukuyama Masamitsu、Chinen Takumi、Kitagawa Daiju
    • 雑誌名

      Journal of Cell Science

      巻: 136 ページ: jcs260000

    • DOI

      10.1242/jcs.260000

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 任意のヒト遺伝子に関わる生命科学実験の検索・提案ウェブツール「LEXAS」2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤慶, 鶴岡慶雅, 北川大樹
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 41 ページ: 102~108

    • DOI

      10.18958/7173-00005-0000358-00

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] CRISPRスクリーニングデータベースを活用した創薬標的探索2022

    • 著者名/発表者名
      新倉 竜太、知念 拓実
    • 雑誌名

      生物工学会誌

      巻: 100 ページ: 449~449

    • DOI

      10.34565/seibutsukogaku.100.8_449

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 中心体タンパク質による分裂期PLK1制御を介した適切な細胞分裂保証メカニズム2022

    • 著者名/発表者名
      竹田 穣、知念 拓実、北川 大樹
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 94 ページ: 419~422

    • DOI

      10.14952/SEIKAGAKU.2022.940419

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Mechanisms of centrosome duplication cycle in human cells2023

    • 著者名/発表者名
      Daiju Kitagawa
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Asia, CILIA & CENTROSOMES Awaji
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The microcephaly protein DONSON regulates the intrinsic S/G2 checkpoint to coordinate DNA and centrosome replication cycles2023

    • 著者名/発表者名
      Kyohei Matsuhashi, Kei K Ito, Grant S Stewart, Shoji Hata, Daiju Kitagawa
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Asia, CILIA & CENTROSOMES Awaji
    • 国際学会
  • [学会発表] Centriole microtubule assembly by a ciliopathy protein2023

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Takeda, Takumi Chinen, Shunnosuke Honda, Sho Takatori, Taisuke Tomita, Shoji Hata, Daiju Kitagawa
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Asia, CILIA & CENTROSOMES Awaji
    • 国際学会
  • [学会発表] マイクロウェルを用いた白血病細胞株の長期シングルセルイメージング法の確立(Long-term single-cell imaging of leukemia cell lines using microwells)2023

    • 著者名/発表者名
      新倉竜太, 山本昌平, 知念拓実, 鈴木宏明, 北川大樹
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] DNA修復経路に着目した簡便かつ高効率な内在性タギング手法の開発2023

    • 著者名/発表者名
      鄭 千遥, 畠星治, 馬渕陽, 北川大樹
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] The emerging role of minor intron splicing in centrosome assembly and Microcephalic Primordial Dwarfism2022

    • 著者名/発表者名
      Kei Ito, Minhe Xu, Shoji Hata and Daiju Kitagawa
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Asia RNA Biology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Mechanisms coordinating DNA and Centrosome replication cycles in human cells2022

    • 著者名/発表者名
      Daiju Kitagawa
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Asia RNA Biology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 相分離・相転移が制御する中心小体複製機構2022

    • 著者名/発表者名
      北川大樹
    • 学会等名
      第22回日本蛋白質科学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 紡錘体形成を駆動する中心体分離のタイミング制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      畠星治、鄭千遥、原田知季、北川大樹
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] 紡錘体形成を駆動する中心体分離の分子機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      畠星治、鄭千遥、原田知季、伊藤慶、北川大樹
    • 学会等名
      2022年度日本生化学会関東支部例会
  • [学会発表] ヒト正常二倍体細胞に対する簡便かつ高効率な内在性タギング手法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      馬渕 陽, 畠星治, 北川大樹
    • 学会等名
      第74回日本細胞生物学会大会
  • [学会発表] 低光毒性なライブセルイメージングを可能にするイメージングバッファーの最適化とその定量的評価2022

    • 著者名/発表者名
      原田知季、畠星治、北川大樹
    • 学会等名
      第74回日本細胞生物学会大会
  • [学会発表] ヒト正常二倍体細胞でのCRISPRノックインにおける長鎖DNAドナーの比較検討2022

    • 著者名/発表者名
      馬渕 陽, 畠星治, 豊田敦, 北川大樹
    • 学会等名
      第45回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 低光毒性なライブセルイメージングを可能にするイメージングバッファーの最適化とその定量的評価2022

    • 著者名/発表者名
      原田知季、畠星治、北川大樹
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 線虫をもちいた生殖老化に寄与する新規因子の探索と解析2022

    • 著者名/発表者名
      日高瞳, 福山征光, 北川大樹
    • 学会等名
      第21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム 2022
  • [学会発表] ヒト正常二倍体細胞でのCRISPRノックインにおける長鎖DNAドナーの比較検討2022

    • 著者名/発表者名
      馬渕 陽, 畠星治, 豊田敦, 北川大樹
    • 学会等名
      第21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム 2022
  • [学会発表] 中心小体de novo形成過程の超解像解析2022

    • 著者名/発表者名
      工風清, 畠星治, 北川大樹
    • 学会等名
      第21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム 2022
  • [学会発表] ヒト細胞において中心体性の極と非中心体性の極を統合し,二極紡錘体を形成 するメカニズム2022

    • 著者名/発表者名
      深作明日香,知念拓実,山﨑香穂,北川大樹
    • 学会等名
      第21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム 2022
  • [学会発表] 低光毒性なライブセルイメージングを可能にするイメージングバッファーの最適化とその定量的評価2022

    • 著者名/発表者名
      原田知季、畠星治、北川大樹
    • 学会等名
      第21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム 2022
  • [学会発表] 核膜崩壊時の特徴的な 中心体配置の分子機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      小森琢磨, 畠星治, 北川大樹
    • 学会等名
      21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム 2022
  • [学会発表] ヒト正常二倍体細胞に対する簡便かつ高効率な内在性タギング手法の開発,2022

    • 著者名/発表者名
      馬渕 陽, 畠星治, 北川大樹
    • 学会等名
      第21回 東京大学生命科学シンポジウム
  • [学会発表] 中心小体de novo形成機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      工風清, 畠星治, 北川大樹
    • 学会等名
      第21回 東京大学生命科学シンポジウム
  • [学会発表] 低光毒性なライブセルイメージングを可能にするイメージングバッファーの最適化とその定量的評価2022

    • 著者名/発表者名
      原田知季、畠星治、北川大樹
    • 学会等名
      第21回 東京大学生命科学シンポジウム
  • [図書] 遺伝学の百科事典・継承と多様性の源2022

    • 著者名/発表者名
      北川大樹 他
    • 総ページ数
      690
    • 出版者
      丸善出版

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公開日: 2024-12-25  

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