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2020 年度 実績報告書

造血幹細胞エイジングを規定するエピジェネティック機構の統合的理解

研究課題

研究課題/領域番号 19H05653
研究機関東京大学

研究代表者

岩間 厚志  東京大学, 医科学研究所, 教授 (70244126)

研究分担者 山崎 聡  東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (50625580)
大島 基彦  東京大学, 医科学研究所, 助教 (70506287)
研究期間 (年度) 2019-06-26 – 2024-03-31
キーワード造血幹細胞 / エイジング / エピジェネティクス
研究実績の概要

(1)若齢・加齢マウスの造血幹細胞のトランスクリプトーム、オープンクロマチン領域解析から、加齢造血幹細胞に特異的なchromatin accessibility の変化を同定した。その解析から、造血幹細胞にストレス暴露履歴がクロマチンに記憶され、ストレス再チャレンジ時により強い反応が起こることを見出し、ストレス反応性の違いが加齢造血幹細胞の特性の一つであることを明らかとした(論文投稿中)。(2)若齢・加齢造血幹細胞のシングルセル RNA-seq 解析から、加齢造血幹細胞の多様性を同定することに成功するとともに、Clusterin (Clu)の発現が一つのクラスターの加齢変化をマーキング可能であることを見出した。IFN応答シグナチャーを示すクラスターが加齢とともに増えることも明らかとなった。Clu の発現とIFN 応答性を指標に加齢造血幹細胞の多様性をより明らかにできる可能性があり、解析を進めている。(3)加齢造血幹細胞を前処置なしに若齢マウスへ移植する実験系により、加齢造血幹細胞のニッチを若齢ニッチにおきかえることに成功した。加齢造血幹細胞の遺伝子発現プロファイルは若齢型に大幅に戻るものの、その機能は回復せず、 DNA メチル化変化も若齢パターンに戻ることはなかった。加齢に伴う造血幹細胞の機能低下は、エピゲノムの変化により依存し、骨髄ニッチに依存せず非可逆的であることが示唆された (J Exp Med 2021)。(4)EZH2 はポリコーム群複合体 2 (PRC2) の酵素活性を持つ構成因子であり、高齢者で発症するMDSなどの血液腫瘍で機能喪失型変異が見られ、がん抑制因子として機能する。Ezh2 ノックアウトマウスを解析したところ、MDSで見られる PRC2 の機能不全がMDSの赤血球系の無効造血に関わることが明らかとなった (Leukemia 2020)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

以下の様に期待通りの結果が得られており、今後はその他の項目で遅れを取り戻せるよう、体制を強化している。
1. 若齢・加齢マウスの造血幹細胞のトランスクリプトーム、オープンクロマチン領域解析から、加齢造血幹細胞に特異的な chromatin accessibility の変化を同定した。その解析から、造血幹細胞にストレス暴露履歴がクロマチンに記憶され、ストレス再チャレンジ時により強い反応が起こることを見出し、ストレス反応性の違いが加齢造血幹細胞の特性の一つであることを明らかとした(論文投稿中)。
2. 若齢・加齢造血幹細胞のシングルセル RNA-seq 解析から、加齢造血幹細胞の多様性を同定することに成功するとともに、Clusterin (Clu)の発現が一つのクラスターの加齢変化をマーキング可能であることを見出した。また、IFN 応答シグナチャーを示すクラスターが加齢とともに増えることも明らかとなった。
3. 加齢造血幹細胞を前処置なしに若齢マウスへ移植する実験系により、加齢造血幹細胞のニッチを若齢ニッチにおきかえることに成功した。加齢造血幹細胞の遺伝子発現プロファイルは若齢型に大幅に戻るものの、その機能は回復せず、 DNAメチル化変化も若齢パターンに戻ることはなかった。加齢に伴う造血幹細胞の機能低下は、エピゲノムの変化により 依存し、骨髄ニッチに依存せず非可逆的であることが示唆された (J Exp Med 2021)。
4. EZH2 はポリコーム群複合体 2 (PRC2) の構成因子であり、高齢者で発症するMDSなどの血液 腫瘍で機能喪失型変異が見られ、がん抑制因子として機能する。Ezh2 ノックアウトマウスを解析したところ、MDSで見られるPRC2の機能不全がMDSの赤血球系の無効造血に関わることが明らかとなった (Leukemia 2020)。

今後の研究の推進方策

1 )造血幹細胞のクロマチン・エピゲノム解析:若齢・加齢マウスのシングルセルの Hi-C 解析と RNA-seq 解析を同時に行う手法を用いた加齢造血幹細胞の解析を行う。2 )造血幹細胞の多様性を規定するクロマチン・エピゲノム特性のシングルセル解析:若齢・加齢造血幹細胞のシングルセル RNA-seq によって明らかになった加齢造血幹細胞の多様性の指標をもとに、多様性を規定するクロマチン・エピゲノム特性を明らかにする。3 )造血幹細胞の機能低下に関わるクロマチン・エピゲノム特性の検証:加齢造血幹細胞クラスターを制御する転写ネットワーク・エピゲノムの解析を進め、加齢造血 幹細胞の機能低下に関わる分子基盤を明らかにする。4 )造血幹細胞の機能低下に関わるストレスシグナルの解明 :3で同定される造血幹細胞の機能低下に関わるクロマチン・エピゲノム特性が、どのようなストレスシグナルによって造血 幹細胞に記憶されるのかを明らかにする。5) 造血幹細胞の機能低下に関わるニッチ異常の解明:加齢骨髄ニッチのイメージングを行う。6 )骨髄球系腫瘍発症における加齢造血幹細胞のエピゲノム要因の解明:エピゲノム関連遺伝子のノックアウトマウスを用いた解析を継続することで、骨髄球系腫瘍発症 における加齢造血幹細胞のエピゲノム要因の関与を明らかにする。また。「MDS 患者サンプルの MDS 幹細胞と前駆細胞分画を用いた ATAC-seq と RNA-seq 解析」を推進し、骨髄球系腫瘍発症における加齢造血幹細胞のエピゲノム要因の実態を明らかにする。7) 機能低下造血幹細胞の再活性化・機能増強法の創出:エピジェネテ ィック制御に関わる NAD+の前駆体 nicotinamide mononucleotide (NMN) の加齢マウスへの投与などの介入実験を進め、 機能低下造血幹細胞の再活性化・機能増強法の創出を目指す。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] PTC Therapeutics(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      PTC Therapeutics
  • [国際共同研究] マルセイユがんセンタ(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      マルセイユがんセンタ
  • [国際共同研究] ルンド大学(スウェーデン)

    • 国名
      スウェーデン
    • 外国機関名
      ルンド大学
  • [雑誌論文] Limited rejuvenation of aged hematopoietic stem cells in young bone marrow niche.2021

    • 著者名/発表者名
      Kuribayashi W, Oshima M, Itokawa N, Koide S, Nakajima-Takagi Y, Yamashita M, Yamazaki S, Rahmutulla B, Miura F, Ito T, Kaneda A, and Iwama A.
    • 雑誌名

      J Exp Med

      巻: 218 ページ: e20192283

    • DOI

      10.1084/jem.20192283

    • 査読あり
  • [雑誌論文] UTX maintains functional integrity of murine hematopoietic system by globally regulating aging-associated genes.2021

    • 著者名/発表者名
      Sera Y, Nakata Y, Ueda T, Yamasaki N, Koide S, Ikeda KI, Kobatake K, Iwasaki M, Oda H, Wolff L, Kanai A, Nagamachi A, Inaba T, Sotomaru Y, Ichinohe T, Koizumi M, Miyakawa Y, Honda Z, Iwama A, Suda T, Takubo K, and Honda H.
    • 雑誌名

      Blood

      巻: 137 ページ: 908-922

    • DOI

      10.1182/blood.2019001044

    • 査読あり
  • [雑誌論文] DHODH inhibition synergizes with DNA-demethylating agents in the treatment of myelodysplastic syndromes.2021

    • 著者名/発表者名
      Kayamori K, Nagai Y, Zhong C, Kaito S, Shinoda D, Koide S, Kuribayashi W, Oshima M, Nakajima-Takagi Y, Yamashita M, Mimura N, Becker HJ, Izawa K, Yamazaki S, Iwano S, Miyawaki A, Ito R, Tohyama K, Lennox W, Sheedy J, Weetall M, Sakaida E, Yokote K, and Iwama A.
    • 雑誌名

      Blood Advances

      巻: 5 ページ: 438-450

    • DOI

      10.1182/bloodadvances.2020001461

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] PRC2 insufficiency causes p53-dependent dyserythropoiesis in myelodysplastic syndrome.2021

    • 著者名/発表者名
      Aoyama K, Shinoda D, Suzuki E, Nakajima-Takagi Y, Oshima M, Koide S, Rizq O, Si S, Tara S, Sashida G, and Iwama.
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 35 ページ: 1156-1165

    • DOI

      10.1038/s41375-020-01023-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Efficacy of the novel tubulin polymerization inhibitor PTC-028 for Mmyelodysplastic syndrome.2020

    • 著者名/発表者名
      Zhong C, Kayamori K, Koide S, Shinoda D, Oshima M, Nakajima-Takagi Y, Nagai Y, Mimura N, Sakaida E, Yamazaki S, Iwano S, Miyawaki A, Ito R, Tohyama K, Yamaguchi K, Furukawa Y, Lennox W, Sheedy J, Weetall M, Iwama A.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 111 ページ: 4336-4347

    • DOI

      10.1111/cas.14684

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] KDM6A inactivation in germinal center B cells promotes the development of plasma cell neoplasms2020

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Iwama
    • 学会等名
      日本がん学会総会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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