研究課題/領域番号 |
19H05657
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 優 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10324758)
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研究分担者 |
蛯名 耕介 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (70612076)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 医療・福祉 |
研究実績の概要 |
マクロファージ系細胞は可塑性に富んでおり、様々な周囲環境によって特殊な形質変化を起こすことで多種多様な生体機能を担っている。特に疾患部位では、特殊に「悪分化」した細胞が病態形成を担っているが、こういった悪分化したマクロファージは従来のように細胞を単離して回収する方法では脱分化してしまうため同定ができなかった。本研究者は個体を活かしたままで注目する組織を観察する生体イメージング研究を独自に開発し、生体組織のありのままの姿を解析してきたが、なかでも生きた状態での炎症関節を観察することで、炎症時に異常に骨破壊を起こす炎症性“悪玉”破骨細胞(マクロファージ系細胞)を同定することに成功した。具体的には、生体イメージング技術を活用することで、正常の骨代謝回転を制御する「恒常性破骨細胞(hOC)」とは異なり、関節リウマチなどの病態で骨・関節を破壊する「炎症性破骨細胞(iOC)」が存在するのではないかとの仮説をたて、本研究においてiOCの同定に取り組んできた。その結果、iOCおよびその前段階のマクロファージであるAtoM(Arthritic Osteoclastogenic Macrophage)の同定に成功し、2019年度に論文発表することができた(Hasegawa et al., Nat Immunol, 2019)。今後はこのiOCおよびAtoMについて、その発生・分化機構の詳細、骨破壊機能の分子メカニズム、この細胞を抑制することによる新規治療法開発について解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来より予備的に見出していた炎症性破骨細胞(iOC)およびその前段階であるAtoMに関して十分な解析を行った結果、2019年度内にまず第一報を報告することができ、計画全体として極めて順調に進展している。またその後の解析についても現在解析が継続して進められている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は特にAtoMが、一体どのような細胞なのであるか、その基本的性質や分子発現・機能を詳細に解析し、特に単球マクロファージ系細胞がどこからどのように炎症関節に移動してAtoMに分化し、さらにそれがin situでプライミングされてiOCへと分化・成熟するのか、その時空間的実体について、周辺環境(ニッチ)の役割も含めて統合的に解明する。特に、AtoMおよびiOCのin vivoでの機能を可視化するためにこれらのリポーター系を構築する。また、炎症関節以外の病的骨破壊(がんの骨転移など)においてAtoMやその類縁したマクロファージが関与するのかについても検討する。さらには、ヒト関節リウマチ患者からの臨床検体を用いることで、ヒトAtoM細胞の同定とその形質解析、その治療標的としての可能性について解析を進める。
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