研究課題/領域番号 |
19H05665
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東野 輝夫 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80173144)
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研究分担者 |
梅津 高朗 滋賀大学, データサイエンス学部, 准教授 (10346174)
荒川 豊 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (30424203)
安本 慶一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40273396)
山口 弘純 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (80314409)
廣森 聡仁 大阪大学, 経営企画オフィス, 准教授 (90506544)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | IoT / 状況認識技術 / センシング / エナジーハーベスト / 無線通信 |
研究実績の概要 |
本提案研究では、バックスキャッター通信技術と3Dプリンタを用いた電子回路設計技術を併用して、ヒトやモノの状況認識に適用可能なバッテリレスでメンテナンスフリーの受動型IoTセンシングデバイス(人感センサ、加速度センサ、温度計など)を開発し、(i)高齢者施設での見守り、(ii)スポーツ選手の活動把握、(iii)ヒトの移動軌跡把握や野生動物の侵入検知、(iv)子供達の人間関係把握のためのソシオグラム構築、(v)傾斜地の風力・地盤変動把握、(vi)商業施設の空調管理、などに活用可能な状況認識技術を創出・実証するとともに、対象領域で受動型IoT デバイスを用いてヒトやモノの様々な状況認識が可能なシステムを構築できるよう、受動型IoTデバイス網を用いた状況認識システムの設計開発支援環境を開発している。 本研究ではそのためのバックスキャッターデバイスを開発すると共に、バックスキャッター通信で得られた情報を既存のIEEE 802.11互換フレームとして送受信可能なソフトウェア無線機(通常のWiFiとバックスキャッター通信を仲介する無線アクセスポイント)を開発した。このソフトウェア無線機では、日本の電波法に準拠したソフトウェア無線機を開発した(技適獲得)。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、テレワークなどで多くの時間をソフトウェアの開発やソフトウェア無線機の設計・開発などに使えることになったため、2020年度は出張関連経費などをソフトウェア無線機の開発に投入し、計画より1年早くソフトウェア無線機の開発が可能になった。ヒトやモノの状況把握技術については、ヒトの移動、ドアの開閉、椅子への着座、温度の変化などの状況把握技術の創出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バックスキャッター通信は、既存のWiFiなどの搬送波に対して、バックスキャッターデバイス上で搬送波を周波数⊿f で反射・吸収させ変調をかけることで、0/1 のビットを送る無線通信方式である。本研究ではそのためのバックスキャッターデバイスを開発すると共に、バックスキャッター通信で得られた情報を既存IEEE802.11 互換フレームとして送受信可能なソフトウェア無線機(通常のWiFi とバックスキャッター通信を仲介する無線アクセスポイント)を開発した。このソフトウェア無線機では、MAC 層に既存の通信プロトコルとバックスキャッター通信が共存可能なプロトコル・スタックを開発することで、バックスキャッター通信で得られた情報を既存のIEEE 802.11 互換フレームとして送受信できるようにしている。さらに、2本のアンテナで同じ信号を受信することで位相差が取得可能になり、バックスキャッターデバイスの相対的な動きがリアルタイムに分かるようになっている。また、通信パケット全体の生信号を取得することができるため、位相を用いた高精度な測距が実現可能である。従って、開発したソフトウェア無線機を対象領域に複数設置し、バックスキャッターデバイスまでの距離を推定することで、デバイスの位置を高精度に判定できるようになった。 さらに、ドアの開閉やスリッパの歩行での足圧の変化、着座の圧力変化、温度変化による抵抗値の変化などを検知可能なバックスキャッターデバイスを開発した。MSWiM2020やICDCN2021国際会議などでバックスキャター通信等を用いたヒトやモノの状況認識技術の発表を行い、Journal of Information Processingで無線センシングに関するサーベイ論文を招待論文として執筆している。
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今後の研究の推進方策 |
開発したソフトウェア無線機を対象領域に複数設置し、バックスキャッターデバイスまでの距離を推定することで、デバイスの位置を高精度に判定できるようになった。各バックスキャッターデバイスにおいて、異なる周波数⊿f で反射・吸収状態を切り替え、デバイス固有の周波数シフトを発生させたり、符号化によりID そのものを発信させたりすることで、複数のバックスキャッターデバイスが共存する環境でも、それらのバックスキャッターデバイスのID が分かるようになり、対象領域に複数のバックスキャッターデバイスが存在する場合のデバイスの区別が可能になると共に、比較的高精度に各デバイスの位置推定ができるようになった(誤差1m 程度)。今後、高精度な時刻同期などの工夫によりさらなる精度向上の余地があり、実験などを通して、その精度を調査し、ソフトウェア無線機をさらに高性能化していく予定である。 ヒトやモノの状況認識については、開発したソフトウェア無線機を利用して、(i)高齢者の見守り、(ii)スポーツ選手の活動把握、(iii)移動軌跡推定、(iv)人間関係把握のためのソシオグラム構築、(v)風力変動把握、(vi)空調管理、などに活用可能な状況認識技術を創出するとともに、三密回避や発熱者の発見などコロナ禍でのニューノーマルな生活環境の構築に活用可能な様々な状況認識システムを構築できるよう、受動型IoT デバイス網を用いた状況認識システムの設計開発支援環境を開発することを考えている。
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