研究実績の概要 |
本研究課題は、周囲の視覚的な情報をもとに眼や手といった体の動きがどう生み出されるのか、空間情報の符号化メカニズムについて、心理物理学と脳機能計測法を組み合わせて明らかにしようとするものである。本年度は、主に視覚心理物理学的手法を用いて、視覚的定位の個人差を生み出す視覚情報処理について検討した。 視野上のどこで定位のずれが生じやすいかは個々人によって大きな違いがあるが、心理物理学実験によって、副尺視力や物体のサイズといった異なる視覚属性の知覚についても精確性が高い場所・低い場所が個人によって異なり、そのパターンが位置ずれのパターンと相関していることを発見した(Wang, Murai, & Whitney, 2020)。さらに、現在注目している物体の知覚が、過去に観察した刺激に依存して変化することを心理物理学的逆相関法を用いて明らかにし(Murai & Whitney, accepted)、現在この方法論の視覚定位への応用を検討している。さらに、視覚定位の脳内基盤を検討するため、MRI実験を行い、定位の個人差と脳内視野マップ(レチノトピー)の個人差を検討しており、これまで10名程度のデータを取得した。派遣先において新型コロナウイルス感染症による対人実験の休止が長期化しており、心理物理実験はほぼすべてオンラインに移行するなど、研究計画の大幅な変更を迫られたものの、定位行動の心理学的・神経科学的メカニズムを解明するという研究目標に対して、上記のように遅滞ない研究遂行を図っている。
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