研究実績の概要 |
本研究では, コラーゲン結合蛋白 (Cnm蛋白) を菌体表層に発現しているStreptococcus mutans (以下Cnm陽性S. mutans) と脳出血との関連を検証している. 本研究課題の最終目標は, Cnm陽性S. mutans感染がどのような機序で脳出血や認知症を発症させるのか, という点の解明と, Cnm陽性S. mutansに対する治療法を確立し, 脳血管障害や認知症に対する新規治療法を開発することである. 2019年度は以下の進展があった. (1)Cnm関連脳出血の臨床像の解明: Cnm陽性S. mutans保菌患者で脳出血の発症が多いことは既に複数の報告があるが, その脳出血の臨床像については, 未だ不明な点が多かった. そこで本研究では, 脳出血患者をCnm陽性S. mutans感染の有無で2群に分け, 前向きに脳出血発症から3ヶ月間の経過を観察し, Cnm関連脳出血の臨床的特徴の解明を試みた. その結果, Cnm陽性S. mutans保菌患者の脳出血は, 脳出血サイズが小さく, 急性期の臨床症状が軽度になる一方, 回復不良者の割合が高いことが明らかになった. 特に出血サイズは, Cnm関連脳出血を予測する一つの因子であることを見出した. (2)Cnm陽性S. mutans感染と脳微小出血の新規発症との関連: 脳微小出血は, 症候性脳出血や認知症との密接な関連が示されている. すでに, 横断的研究において, 脳微小出血とCnm陽性S. mutans感染との関連が示されていたが, これまで経時的に解析されたことはなかった. そこで本研究ではCnm陽性S. mutans感染と脳微小出血の新規発症およびその分布について, 後方視的に解析した. その結果, Cnm陽性S. mutans感染は脳微小出血の新規発症の重大な危険因子であることが明らかになった.
|