脳微小出血は、頭部MRI-T2star強調画像において小さな円形の低信号域として描出され、脳卒中や認知症と関連する。Streptococcus mutansは、う蝕の主要な原因菌であるが、コラーゲン結合タンパク質であるCnmを発現するcnm遺伝子をもつStreptococcus mutans (cnm陽性Streptococcus mutans) を口腔内に保有する症例においては、脳微小出血の有病率が有意に高いことが報告されている。本研究では、cnm陽性S.mutansと脳微小出血の発症との関係について、後方視的、縦断的に解析した。脳卒中症例3782名のうちcnm陽性S. mutansの保有の有無を調査した404名を同定し、その中からT2star強調画像を含む3tesla頭部MRIを180日以上の間隔を空けて2回以上施行されている症例を対象とした。cnm陽性S.mutansを保有する症例 (cnm陽性群) と保有しない症例 (cnm陰性群) で、Quasi-Poisson Regressionモデルを使用して、脳微小出血の新規発症率を比較した。対象となった111人中、21人がcnm陽性群であり、90人がcnm陰性群だった。血圧や抗血栓薬の内服の有無等の背景は2群間で概ね同等であったが、脳微小出血の新規発症率は、cnm陽性群で、特に深部領域で有意に高かった。年齢、性別、高血圧、腎機能障害を調整因子として、多変量解析を行っても、cnm陽性群の脳微小出血新規発症率は有意に高値であった。本研究から、cnm陽性S.mutansを口腔内に保有することが、特に深部領域での脳微小出血の発症と密接に関係していることが明らかになった。
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