研究課題/領域番号 |
19J00123
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 直樹 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | Newton-Okounkov 凸体 / クラスター多様体 / トロピカル変異 / 組合せ論的変異 / 弱ファノ多様体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は結晶基底と Newton-Okounkov 凸体の関係を通して表現論の幾何学への応用を与えることである. 報告者は既存の Newton-Okounkov 凸体たちの間の新しい関係や良い正値性を持つヘッセンバーグ多様体の分類などを与えることに成功し, 以下の三つの結果を得た. 芝浦工業大学の大矢浩徳氏との共同研究においてクラスター多様体のコンパクト化を考察し, seed の集合でパラメトライズされる Newton-Okounkov 凸体の族を構築した. さらにシューベルト多様体の場合にこの Newton-Okounkov 凸体の族が良い組合せ論的性質を持っていることを示し, ストリング多面体および 中島-Zelevinsky 多面体がどちらもこの族に含まれていることを証明した. 応用としてこれらの表現論的特殊多面体たちがトロピカル変異の繰り返しによって移り合うことが示される. 旗多様体の反標準直線束を考えると, クラスター構造から定まる Newton-Okounkov 凸体は自然な双対多面体を持つ. 報告者は大阪大学の東谷章弘氏との共同研究において, 組合せ論的変異というファノ多様体のミラー対称性の文脈で導入された変異を考察し, これらの双対多面体たちが互いに組合せ論的変異の繰り返しによって移り合うことを証明した. 岡山理科大学の阿部拓氏および Huazhong University of Science and Technology の Haozhi Zeng 氏との共同研究において A 型の正則半単純ヘッセンバーグ多様体を考察し, それが弱ファノであるための簡潔な必要十分条件を与えた. 2018年度に行った多面体に対する Demazure 作用素を用いた 中島-Zelevinsky 多面体の実現に関する論文が Selecta Mathematica から出版された. また2017年度に行った正則ヘッセンバーグ多様体の代数幾何学的基礎付けに関する研究をまとめた論文が Transformation Groups から出版された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
旗多様体の場合を考えると, 大矢浩徳氏との共同研究で構成した Newton-Okounkov 凸体の族はシューベルト・カルキュラスの組合せ論的モデルであるための基本的な性質を備えている. これにより具体的な組合せ論的モデルを探すための大きな枠組みが得られたことになる. 阿部拓氏および Haozhi Zeng 氏との共同研究はヘッセンバーグ多様体の良いクラスを記述するものであり, ヘッセンバーグ多様体に関する研究を進めていく際にまず考えるべき候補を与えている.
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今後の研究の推進方策 |
正則半単純ヘッセンバーグ多様体の Gromov width の計算を目標とし, まずウェイト多面体に付随するトーリック多様体の場合を考察する. ワイル群の最長元がディンキン図形の自明な自己同型を誘導するとき, 最長元によって移り合う余次元 1 の面の距離は Gromov width の上界を与えている. この上界が Gromov width そのものであることを証明し, その後ワイル群の最長元がディンキン図形の非自明な自己同型を誘導する場合を考察する. 典型例は A 型の場合であるが, この場合は Choi-Hwang によって Gromov width の公式が与えられているので, この公式と比較しながら一般の場合を考察する. 併せてシンプレクティック Gelfand-Tsetlin 多面体を組合せ論的モデルとするシューベルト・カルキュラスの理論を発展させる. 具体的にはシンプレクティック Gelfand-Tsetlin 多面体においてシューベルト類と対応する面 (シンプレクティック Kogan 面) を C 型のシューベルト多項式と関連付け, その関係を応用してシンプレクティック Kogan 面の組合せ論的性質を解明する.
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