研究実績の概要 |
1.昨年度、3種類のAMT1分子種 (AMT1;1, AMT1;2, AMT1;3) は、低濃度のアンモニウム供与下で高発現し、低アンモニウム条件でのみ三重変異体の生育が著しく悪化することを見出した。これらの結果は、AMT1分子種が協調的に低濃度のアンモニウムを吸収することを示唆した。本年度は、無施肥土壌における生育解析および収量調査を行い、三重変異体の収量が大きく低下することを見出した。また、各AMT1分子種の細胞内局在を詳細に解析し、いずれの分子種も土壌側の細胞膜に極性を持って分布すること、ERにも局在することが分かった。AMT1;1とAMT1;2のER蓄積は、アンモニウムの供与後の発現量の増加に伴って顕在化した。ER蓄積の生理的意義は不明であるが、AMT1分子種の新規な活性制御機構の可能性があると考えている。
2.3種類のAMT2分子種 (AMT2;1, AMT2;2, AMT2;3) の三重変異体を作出し、低濃度から高濃度のアンモニウムを供与して生育を評価した。いずれの窒素条件でも、三重変異体は野生型と同等の生育を示し、AMT2分子種のアンモニウム吸収に対する貢献が限定的であることが示唆された
3.昨年度、グルタミン合成酵素GS1が細胞膜でAMT1と相互作用するかを検討したが、GS1は細胞膜以外の膜と相互作用することが示唆された。GS1と相互作用する膜タンパク質を同定するために、イネの根で発現する2つのGS1分子種 (GS1;1, GS1;2) にFlagタグを付加したタンパク質を自身のプロモーターで発現させた形質転換イネを作出し、膜タンパク質画分に対する共免疫沈降を実施した。沈降タンパク質をSDS-PAGEで分離したのち主要なバンドを切り出し、質量分析によるタンパク質同定に供した。その結果、いくつかのGS1と相互作用する膜タンパク質の候補を得ることに成功した。
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