研究課題
申請者はこれまでに、マウス加齢個体卵由来の受精卵を仮親に移植することで、その後得られる胎盤の重量が若齢個体卵由来のものと比較して増加し、胎児由来の細胞層であるスポンジオトロホブラスト層の面積が増加することを見出した。さらに加齢卵由来胎盤と若齢卵由来胎盤では遺伝子発現に変化があり、中でもGNASやSlc22a18といったインプリント遺伝子や、胎盤形成に関与するRspo3やSynb、Hes1といった遺伝子の発現が加齢卵由来胎盤で上昇していることを見出した。本年度は加齢卵を十分量用意することの困難さから卵の遺伝子発現変動等を解析することはできなかったが、前年度の胎盤を用いたRNA-seqの結果の詳細な解析により、細胞増殖に深く関与するMAP kinaseの活性が加齢卵由来胎盤で顕著に上昇していることが明らかになった。また、これまでの試験では単一のブリーダーから購入したマウスからデータを得ていたが、他のブリーダーから購入した同一系統のマウス(非近交系)でも同様に加齢卵由来胎盤の重量が増加することを見出した。さらに、本研究では非近交系のマウスを用いてきたが、近交系のマウスを用いて同様の試験をすると、胎盤重量には変化が見られなかった。これらのことから、系統による差はあるものの、加齢個体由来胎盤ではエピジェネティクス異常が既に起きており、この異常は受精後も維持され胎盤の形成に影響を及ぼすことが推測できる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep
巻: 8 ページ: 14149
10.1038/s41598-021-93604-y
Biol Reprod
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10.1093/biolre/ioab096