研究課題
本研究では、sgRNAライブラリーとCas9 KIマウスを用いた生体内スクリーニング法を確立し、未熟T細胞から成熟T細胞に至る過程で必要とされる遺伝子ならびに正負の選択に必要な遺伝子を網羅的に同定することを目的とする。これまでの研究成果から、以下の実験手法を確立した。(i) sgRNAを骨髄細胞へ導入および遺伝子欠損骨髄細胞の選抜。(ii)遺伝子欠損骨髄細胞を用いた骨髄キメラマウスの作成。(iii)次世代シークエンサーとスーパーコンピュータを用いたsgRNA配列の同定と集計。また、バーコードライブラリー(約20,000種類)を用いた検討から、700~800程度の骨髄細胞が胸腺へ移行し、T細胞へ分化することが示された。そこで、ImmGen databaseに登録された胸腺細胞亜集団の遺伝子発現情報を解析し、CD4/CD8両陰性(DN)細胞からCD4/CD8両陽性(DP)細胞にかけて発現上昇する遺伝子群(145遺伝子)を抽出した。これらの遺伝子群を標的としたsgRNA配列を設計し、独自のsgRNAライブラリーを構築した。新規に構築されたsgRNAライブラリーを用いて生体内スクリーニングを実施したところ、86種類のsgRNAが胸腺細胞から検出された。このうち十数個のsgRNAについては、DPからCD4単陽性細胞(CD4SP)またはCD8単陽性細胞(CD8SP)へ分化する過程で、sgRNA配列の検出頻度が減少した。したがって、これらの遺伝子については、胸腺細胞の分化に必要な遺伝子であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
胸腺細胞の分化に必要と考えられる候補遺伝子を多数同定し、正負の選択に必要な遺伝子群が同定されつつあることから、本研究プロジェクトは順調に進められていると判断されるため。
今後、選出された遺伝子を個別に欠損する骨髄キメラマウスや胸腺細胞特異的に欠損するマウスを作成し、その生理的意義を解析する必要がある。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件)
Nature Metabolism
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