研究課題/領域番号 |
19J00277
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 修平 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 二方向X線透視システム / デジタル画像相関法 / 幾何学的形態測定学 |
研究実績の概要 |
本年度は,二方向X線透視システムを用いて,ヒト足部骨の3次元動態の解析を開始した.また,X線透視システムを用いた足部骨輪郭の撮影と同時に,ビデオカメラを用いた屍体足の体表面動態の撮影を実施した.さらに,幾何学的形態測定学を用い,ヒト足部骨の動態を特徴付ける事が予測される踵骨・距骨の形態変異傾向を定量化し,性差・加齢の要因からその特徴を解析した. 第一に,屍体足に対し漸増静荷重負荷を与え,二方向からX線透視画像を撮影した.撮影したX線画像の足部骨の輪郭に3次元骨モデルを重ね合わせることを試みた.この静止画像に対する3次元骨モデルの重ね合わせにより,静荷重負荷に伴う骨動態の定量化が可能となる. 第二に,ビデオカメラを用いて,屍体足に対し漸増静荷重負荷を与えた際の足部体表面を撮影した.足体表面に塗布した黒色の斑模様が映された静止画像にデジタル画像相関法を適用し,荷重負荷に伴う足部体表面の最大・最小主ひずみ値を計測した.その結果,距骨下関節外側面の最小主ひずみ・距舟関節周囲の最大主ひずみに一定の傾向を認めた. 第三に,幾何学的形態測定学を用いて,ヒト踵骨・距骨の形態変異を定量化した.56足のCT画像から構築した踵骨・距骨の各3次元骨モデルに対して37点の解剖学的標識点をデジタイズし,Procrustes法により各標本のレジストレーションを実行した.各標本の平均形状からの変位を主成分分析することで踵骨・距骨形状の変異傾向を検出した.さらに,幾何学的形態測定学による解析に加え,踵骨・距骨における関節面の三次元傾斜角度を定量化した.踵骨・距骨形状の変異傾向と関節面傾斜角度の性差・加齢変化を検証した.その結果,女性の踵骨底側隆起は男性と比較し有意に外側へ変位し,踵骨における距骨関節面は女性において内側・前方方向へ有意に大きく傾斜していることが分かった.これらの知見は当該分野の国際誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,二方向X線透視システムを用い,漸増静荷重負荷に伴う足部骨動態の解析を開始した.また,デジタル画像相関法を用いて屍体足の体表面動態を定量化することに成功した.また,幾何学的形態測定学による解析から,ヒト後中足部の運動を特徴付ける事が予測される踵骨形状の形態変異傾向を得た.以上の理由からおおむね順調に進展していると考える.一方,屍体足実験において,標本の皮膚の状態により体表面の主ひずみ値を安定的に定量化できないケースが存在した.このような標本に対して安定的に主ひずみ値を計測できるよう対策が必要となった.
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今後の研究の推進方策 |
1)屍体足実験 本年度に引き続き,二方向X線透視画像を用いた足部骨動態の解析とデジタル画像相関法を用いた足部体表面動態の解析を進める.継続して複数標本から骨動態・体表面動態のデータを得ることで,足部骨動態と体表面動態との対応関係を調査し,非侵襲的に足部骨動態を検出する手法を開発する.また,本年度の試みで確立した幾何学的形態測定学の手法を屍体足標本に適用し,骨動態と骨形態の対応関係の調査を進める.
2)生体足実験 ヒト生体を対象に,デジタル画像相関法を用いた歩行中の足部体表面動態の計測を開始する.被験者の足部形状(回内足・回外足)が歩行中の足部体表面動態に与える影響を合わせて調査する.さらに,屍体足実験において得られた骨動態と足部体表面動態との対応関係から,生体足部内で生じている回内足・回外足の骨動態異常を推定する事を試みる.
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