本研究の目的は、超高エネルギー領域の重力理論の理解のため、宇宙初期特異点の性質を解明し、あらゆる特異点を防ぐための機構を明らかにすることです。 これまでの研究において、「スカラー曲率特異点」と呼ばれる種類の特異点については、その生成を緩和するモデルが提唱できています。一方で、これとは異なる種類の「非スカラー曲率特異点」と呼ばれる特異点については、その性質が、最も単純な宇宙である一様等方宇宙の場合にしか明らかではありませんでした。本年度は、これまで一様等方宇宙に対して行っていた解析を、一様等方とは限らないより一般の宇宙へと拡張しました。その結果、一様等方でないような宇宙において「非スカラー曲率特異点」に分類される宇宙初期特異点が存在するかどうかの判別法を明らかにしました。 特に、この判別法により、前年度までの研究で得られていた、安定でかつスカラー曲率特異点を持たないような宇宙が、実は、非スカラー曲率特異点を持つということが明らかになりました。したがって、この結果はこれまでの枠組みがあらゆる特異点を解消する機構としては不十分であるを表しており、さらなる研究が必要であることが明らかになりました。
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