研究課題/領域番号 |
19J00314
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
杉山 美耶子 青山学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | Oud Holland / 鹿島美術財団出版助成 / 日本ベルギー学会 / 美術史学会全国大会 / 奉納像 / 奇跡像 / 巡礼地 / 贖宥 |
研究実績の概要 |
2019年4月から7月にかけて、受入研究者との面談を重ねつつ、本研究課題であるネーデルラントにおけるヴォーティブ・イメージ(奉納像)のリストを作成した。同リストに基づき、8月下旬から9月上旬にかけて、ベルギーの諸都市(ダディゼーレ、ロンバルドセーデ、スヘルヘンフーヴェル、ハレ、アルセンベルク、ブリュージュ)及びオランダのメールフェルトホーヴェンを訪れ、現地にてヴォーティブ・イメージと奇跡像の実見調査を行った。また、ベルギー王立図書館(ブリュッセル)及びヘント大学にて、関連資料を収集した。 2019年11月には、鹿島美術財団年報に本研究課題と関連する拙稿が掲載された。また、鹿島美術財団の出版助成金を同月に受領し、2021年11月を目途に博士論文に基づく単著が、ベルギーの出版社Brepolsより刊行されることが決定した。 2019年12月にベルギー大使館で開催された日本ベルギー学会では、夏季に実施した海外調査の成果を口頭発表し、活発な議論を交わした。2020年1月には、国際美術史雑誌のOud Hollandに、日本人として初めて論文が掲載された。同論考は、本研究課題の基盤となる贖宥とイメージの関係に関わる内容であり、国際的に研究成果を発信することが出来た。 2020年2月下旬から3月上旬にかけて、冬季調査を実施した。ベルギーのブリュージュ、ブリュッセル、ヘントにて、事例研究の対象となる作品の実見調査と資料収集を行った。また、ドイツのケルンでは、応用工芸美術館にて事例研究の対象作品の実見調査と共にキュレーターへのインタビューを実施した。ケルン所蔵作品は、これまで一切の研究が成されてこなかった作品であるが、制作者・制作年代・図像源泉について、新知見を提示することが可能であると考えている。なお、ケルンにおける調査の成果は、2020年度美術史学会全国大会(5月開催予定、延期決定)にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
夏季に実施した海外調査において、ヴォーティブ・イメージ研究の拡大のためには、奇跡を起こす聖像研究が重要である点に気付くことが出来た。調査では実際に今尚ベルギー、オランダに残る奇跡像を複数訪れ、それらに捧げられたヴォーティブ・イメージの写真撮影および調査を行った。この新たな発見を基に、今後の海外調査でも継続してヴォーティブ・イメージと奇跡像調査を継続していく。 2019年度鹿島美術財団の出版助成を受け、博士論文を改訂した単著が2021年11月を目途にベルギーの出版社より刊行されることが決定した。本書では、博士論文のテーマである贖宥とイメージの関係に加えて、本研究課題の成果の一部も取り入れたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
夏季・冬季にベルギー及びオランダ諸都市での実見調査を重ねていくと共に、現地のキュレーターや教会関係者からの聞き取りを行う。懸念すべき点は、2020年夏季の海外調査が実施できるか否か、という点である。世界的感染症拡大を受け、海外への渡航が困難な状況が続く場合、夏季調査を取りやめ、冬季調査を長期間行うこととする。 2020年度前半は、これまで実見調査を行ってきた個別作品の詳細な事例研究を重ねてゆき、その成果を学会や論文にて発表していく。しかし、採択された発表の中には既に学会自体が中止となったものも複数あり、発表の機会が減少している。また、図書館・研究機関の閉鎖に伴い、2020年度前半は研究が停滞することが予想される。そのため、これまで利用してこなかったオンライン上のリサーチ・ツール等を活用した研究の拡充と、研究者とのネットワーク拡大に努めたい。
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