研究課題/領域番号 |
19J00336
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
真砂 全宏 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 強磁性量子臨界 / 多極子秩序 / 核磁気共鳴 / 高圧実験 |
研究実績の概要 |
正方晶の反強磁性体CeCoSiに対して核磁気共鳴測定を行った.この物質はセリウムの位置に反転中心がなく,これに起因する特異な物性が期待されている.測定の結果,この物質において反強磁性転移より高温で別の非磁性転移が起こることが明らかになった.さらに圧力を印加すると,この相の転移温度が上昇して異常がより明瞭となった.この結果から,CeCoSiにおいて電気四極子相が存在する可能性があることが分かった.正方晶の化合物で電気四極子秩序を示す例は極めて少なく.今回の発見は意義深い.今後はさらに測定を進めて秩序状態の対称性を絞り込むことを目指す. また,強磁性量子臨界候補物質として,主にセリウム系化合物の試料合成を試みた.その中でセリウム系の直方相の化合物Ce2Ni2Znの単結晶試料を初めて作製することに成功した.電気抵抗測定を行った結果,この物質は低温まで磁気転移を示さず,価数揺動系に特徴的なふるまいを示すことを初めて明らかにした. 磁気量子臨界点に関連し,鉄系の反強磁性体Zr4Fe4Si7及びその関連物質の試料合成を試みた.作製に成功した試料の電気抵抗を測定した結果,いくつかの物質で反強磁性量子臨界点に近い振る舞いすることが明らかとなった.鉄系物質は超伝導体などでここ10年余り注目を集め続けてきたが,今回の発見は新たな超伝導体の探索の手掛かりとなることが期待される. ウラン系の強磁性臨界候補物質の合成も試みた.東北大学金属材料研究所(茨城県大洗町)にて試料合成を行った.その中でウラン・テルル化合物を合成したが,得られた試料は目的とは別の化合物である可能性が高いことが判明した.今後は別の方法で作製を試みる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,反強磁性CeCoSiについては順調に核磁気共鳴の測定結果が得られており,目標であった高圧下の結果もすでに得ている.さらに起源が未解明であった相転移についての手掛かりを得ることもできた.また,国際会議などの場で成果を発表することができた. 試料合成に関しては,当初の目標であった強磁性量子臨界候補物質の合成は途上であるが,反強磁性体の関連物質についてはすでにいくつか合成に成功し,今後の進展も予想される.ウラン系化合物についても合成を試みるに至った点は肯定的に評価でき,今後の結果に期待がもたれる.
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今後の研究の推進方策 |
CeCoSiについては,核磁気共鳴測定を継続する.特に常圧における磁場角度・強度依存性を詳細に測定し,非磁性転移の起源並びに対称性の解明を目指す. 鉄系の反強磁性体Zr4Fe4Si7やその関連物質については,さらに関連物質を合成し,可能であれば圧力を印加して秩序相の量子臨界点を電気抵抗測定により探索する. ウラン系の強磁性臨界候補物質の合成については,今年度も金属材料研究所に出向き,作製された試料の評価や物性測定を行う方針である.
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