液滴のように変形可能な粒子の運動を考察するために、まず、時間変化しない変形が運動に与える影響を調べた。変形形状は円を基準として波数展開して考え、変形の波数モード毎に議論を行なった。液滴では表面張力の影響で高波数モードは現れにくいと考えられるので、低波数モードである2モード・3モードの変形が運動に与える影響を独立に検討した。2モードの変形は、楕円への変形を表す。このとき、楕円の短軸の方向に安定に等速運動する。一方、3モードの変形は、おにぎりのような三角形の変形を表し、粒子サイズが小さいときには角の方向に、粒子サイズが小さいときには、辺の方向に等速運動することが明らかとなった。 また、別の変形としてプロペラ形状の自己駆動粒子の回転運動についても調べた。プロペラ形状のカイラリティを様々に変化させ、カイラリティが自己駆動運動に与える影響を調べた。まず、ろ紙をプロペラ型にカットし、ろ紙に樟脳を染みこませた。樟脳は水面に浮かべると自己駆動運動することが知られており、本実験では水面に重心固定用の軸を用意し、自転運動のみ可能な状態とした。プロペラ型のろ紙樟脳を水面に浮かべると、樟脳粒子は時計回り・反時計回りどちらの方向にも一定の角速度で自転運動した。カイラリティのない対称な粒子の場合には回転方向に依らず角速度の絶対値は等しかったが、カイラリティのある粒子形状の場合には、回転方向によって角速度の絶対値が異なった。数理モデルの数値計算結果を基に、プロペラ型樟脳粒子の回転運動では不完全なピッチフォーク分岐がみられることを見出した。不完全なピッチフォーク分岐では分岐構造の対称性が崩れる。実験で見られた角速度の絶対値の違いはこの分岐構造の非対称性を反映していると考えられる。
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