研究実績の概要 |
生体内での抗体Fc部位の化学修飾による抗体機能制御を目的とし、生体適合性の高い金触媒とプロパルギルエステル(K. Tanaka et al. Angew. Chem. Int. Ed., 2017, 56, 3579)による抗体修飾反応を検討した。しかし、細胞表面やアルブミンの修飾について本反応の実施例があるものの、抗体修飾においては反応性が優れていないことが明らかとなった。また、計画書に記載している抗体結合ペプチドと金触媒の架橋体を合成し、同様に抗体修飾を試みたが、反応の進行を確認することはできなかった。そこで、遷移金属触媒反応をトリガーとして反応性の高い中間体を生成する反応基質を利用した新規反応を発案した。本反応に適用できる金属触媒は、生体内における利用例があり、生体内抗体修飾反応に利用可能であると考えられた。実際に、本金属触媒および反応基質を合成し、タンパク修飾反応を実施したところ抗体やアルブミンが修飾されていることをSDS-PAGEにて確認することができた。また、in vitroの細胞系において、蛍光団を有する反応基質を用いた同様の反応を行ったところ、触媒と反応基質の共処理群においてのみ、細胞表面が蛍光標識されていることを蛍光顕微鏡により確認した。本反応は、触媒毒となりうるグルタチオンの存在下においても進行しており、生体適合性の高い反応である。2019年度に得られた以上の結果は、生体内抗体修飾反応による抗体機能制御に繋がるものである。今後、抗体修飾による機能制御を実施する前に、所属研究室の独自技術である糖化アルブミンを用いた送達技術を利用し、本修飾反応の有用性を証明する予定である。
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