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2019 年度 実績報告書

神経配線のレベルにおける雌雄差の形成メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 19J00403
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

稲田 健吾  国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2022-03-31
キーワードオキシトシン / 視床下部 / トランスシナプス標識法
研究実績の概要

本申請課題ではマウス成獣をモデルとして、雌雄の脳で差異のみられる部位を神経配線レベルで同定することを目的とする。特に食欲や体温維持など、身体の生理的な面を司る視床下部を対象とする。神経配線の可視化にはトランスシナプス標識法を用いる。1年目の本年度では、まず使用するマウス系統の選定を行った。計画では性ホルモンであるプロゲステロンに対する受容体を発現している細胞において、DNA組み換え酵素Creを発現するマウス系統を使用する予定であった。しかしこの系統のCre発現パターンを調べたところ、視床下部全域にわたって広く発現していることが分かった。この場合、トランスシナプス標識法を、特定の限定した神経核に対して適用することが困難である。
雌雄差のある行動に関与しており、かつCreが特定の神経核に限局している系統をスクリーニングすることで、申請者らはオキシトシン細胞でCreを発現するマウス系統(OXT-Cre)を使用することにした。そしてOXT-Cre系統で、オキシトシン細胞がクラスターを形成している室傍核と呼ばれる神経核にトランスシナプス標識法を適用した。そしてオキシトシン細胞に入力を送る神経細胞群を雌雄で網羅的に可視化し解析した。その結果として、オキシトシン細胞への入力パターンは雌雄でおおむね似ているものの、一部の神経核からの入力は異なっていることが明らかとなった。
また次年度で実施する電気生理学実験のためのセットアップについても、申請者自身が設計を行ったシステムが納品され、予備実験により細胞の電気活動を高精度で記録できることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

トランスシナプス標識法を用いた神経配線の解析において、使用するマウス系統は注意して選ばなければならない。本手法ではCreを発現しているマウス脳に対し、改変型狂犬病ウイルス液を脳内に局所注入する。視床下部は異なる機能を生み出す多数の神経核から構成され、また同じ神経核内でも細胞種ごとに異なる機能に関与していることがある。そのためトランスシナプス標識法を使用する際には、特定の神経核の、特定の細胞種にウイルスを感染させる必要がある。このうち細胞種の指定は、特定の細胞種でCreを発現するマウス系統を使用することで行うことができる。一方神経核の指定はウイルス液をその神経核に局所注入することで行う。しかし実験的にはCreが隣接する神経核でも発現していた場合、ウイルス液が物理的に拡散することで、往々にしてその隣接する神経核へも感染してしまい、正確な神経配線の記述ができない。本年度はこうした理由から様々なマウス系統を注意深く解析し、OXTC-Creマウス系統を使用することにした。
本年度の実験から、室傍核のオキシトシン細胞は主に視床下部全域から満遍なく入力を受けており、逆に大脳皮質からの入力はほとんどないことが分かった。一部の神経核からの入力には雌雄で異なるものがあり、これらの解析を次年度以降に行う予定である。

今後の研究の推進方策

本年度の実験から室傍核オキシトシン細胞に投射する神経配線を解析することができるようになった。雌雄で比較を行ったところ、視床下部の一部の神経核からの入力に雌雄差が見られた。これらの神経核において、中には先行研究から機能が分かっているものもあるが、多くは機能がよく分かっていない。そこで次年度においては行動学的な雌雄差に貢献している神経配線の解析を進める。
また次年度においては電気生理学的手法を用いて、調べた神経核からの神経伝達強度が増強されているかも調査する。具体的にはシナプス前細胞に光感受性タンパク質チャネルロドプシンを発現させる。チャネルロドプシンは光に反応して陽イオンを細胞内に輸送する性質を持つため、光刺激によって神経伝達物質の放出を誘起することができる。室傍核オキシトシン細胞から全細胞記録法で電気生理学的記録をとりつつ、シナプス前細胞を光刺激することで神経伝達強度を解析することができる。

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公開日: 2021-01-27  

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