研究課題
スタチンによる横紋筋融解症モデルとしてHMGCR骨格筋特異的ノックアウトマウスを作製した。その結果、骨格筋でのHMGCR低下は横紋筋融解症用の所見を示すことを明らかとしている。そこで、本研究課題ではHMGCRノックアウトマウスが横紋筋融解症様症状を呈する原因を解明することを目的とし解析を行った。昨年度には時期特異的・骨格筋特異的Cre Tgマウス(ACTA1-rtTA,tetO-cre)を導入して、HMGCRは骨格筋において筋形成(myogenesis)に影響を与え、横紋筋融解症様のフェノタイプを示すことを明らかとしている。さらに、骨格筋におけるHMGCR機能は骨格筋の形成・再生過程に関与している可能性を見出しており、本年度はHMGCRをノックアウトしたマウス由来筋細胞株C2C12を用いて、HMGCR低下による筋形成障害の分子メカニズム解析を行った。その結果、1)HMGCRの機能低下は内因性に合成されるコレステロールの細胞膜への局在を顕著に減少させること、2)細胞膜コレステロールの減少により筋細胞接着・融合に必要なたんぱく質の局在が変化し、筋細胞同士の融合障害を引き起こすこと、3)細胞接着・融合の障害により筋線維の形成不全が生じること、を見出した。以上より、HMGCR機能低下により生じる内因性コレステロールの細胞膜での減少が、筋細胞接着・融合障害を惹起し、筋形成不全を誘導することがHMGCRノックアウトマウスにおける横紋筋融解症様症状の原因の1つであると考えられる。またスタチンを投与したマウスにおいても、筋損傷からの筋再生が低下することを見出しており、スタチンにおける横紋筋融解症の発生には筋形成不全が関与しているという、新規知見を見出すことができた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Experimental gerontology
巻: 154 ページ: 111519
10.1016/j.exger.2021.111519