研究課題/領域番号 |
19J00458
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小野田 実真 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(CPD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2024-03-31
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キーワード | ボトルブラシポリマー / 高分子ゲル / 異方性材料 / 分岐高分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、側鎖が高密度にグラフトされた特殊構造高分子であるボトルブラシポリマー(BBP)を用いた新しいタイプの高分子ゲルを創製することを目的としている。特に、高密度側鎖に起因する排除体積効果に基づくナノロッド形状を自己組織化のビルディングブロックとして用いることを考え、異方的・等方的な周期構造を有する高分子ゲルを創製することを主眼に置いている。本年度は異方的な超高分子量BBPの設計経路を確立すると共に、BBPゲルの基本物性を解明することを目指し研究を遂行した。なお、本研究は要求される知見の性質上、米国・マサチューセッツ工科大学との共同研究として実施し、米国を拠点に研究活動を実施している。コロナ禍での研究活動制限が厳しい状況ではあったが、本年度は以下に掲げる3つの成果が得られた。 第一に、Poly(ethylene glycol)ベースのBBPゲルを設計し、その物性を評価した。主鎖重合度の増大と共にゲル化速度や力学強度が増大し、直鎖高分子と比べ最大で100倍高速にゲル化することを明らかにした。また、主鎖重合度が増大しすぎるとダングリング鎖が形成され、力学強度はかえって低下することも明らかにした。以上の内容は2報の論文にまとめ、1報は受理済、もう1報は投稿中である。第二に、Poly(n-butyl acrylate)ベースの自己修復性超分子BBPエラストマーを設計、物性の評価を行った。詳細は検討中であるが、BBPは自己修復の緩和時間に大きな影響を与えることが分かってきた。本内容は2021年度中に学会報告をする予定である。第三に、BBPベースの異方性高分子ゲルの創製を目指し、刺激応答性・超高分子量BBPの合成手法の確立を目指した。現段階までに基本的な合成指針の確立を達成し、2021年度は刺激に応じて異方的な力学応答を示すBBPゲルの実現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、求められる知見の特性上、米国・マサチューセッツ工科大学を拠点に活動を実施している。昨今の新型コロナウイルスの流行に伴い本年度は大学内での実験・研究が著しく制限される状況ではあったが、論文2報の投稿(1報は受理)・新規エラストマーの創製の成功・異方性ゲルの設計指針の確立など、基礎的な成果・知見を蓄積することができている。2021年度も引き続き100%の大学稼働率は得られていないが、2020年度の知見をもとに研究を加速させ、目的とする刺激応答性BBP高分子ゲルの創製を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に得られた知見をもとに、以下2つの課題に沿って研究を展開する。 1. BBP架橋・超分子エラストマーの特異物性の解明 2020年度までの知見から、BBPを架橋剤に用いて得られる超分子エラストマーは、BBP含有量の増大と共にネットワークからの引き抜けの緩和時間や活性化エネルギーが大きく変動することが分かっている。エンタングルメント含有量の低下がその影響の一端と考えられるが、多官能性超分子エラストマーの速度論に着目してその力学物性を明らかにした例は少ない。そこで、BBP架橋エラストマーの物性を明らかにし、新たなエラストマーの設計指針の確立を目指す。 2. 異方性BBPゲルの実現 2020年度までに、異方性BBPゲルを創製するための超長鎖高分子の創製に成功している。2021年度はこの知見をベースに刺激応答性高分子側鎖を有する超長鎖BBPの合成を実現し、これをビルディングブロックとするBBPゲルの実現を目指す。
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