管状エンドソーム(Tubular endosome)は、特徴的な管状の構造を持つオルガネラで、細胞外からエンドサイトーシスにより取り込んだ分子を再び細胞外に戻すリサイクリングに関与すると示唆されている。しかし、実は、管状エンドソームはHeLa 細胞以外のほとんどの細胞株には存在せず、また個体のどの組織に存在するかに関しても全く報告されていない。したがって、個体における生理的意義も全く明らかでない。私はこれまでの研究により、管状エンドソームの生理的意義を解析する手がかり、すなわち、管状エンドソームは筋細胞の分化過程において形成されることを見出した。そこで、筋細胞における管状エンドソームの役割と組織特異的な形成機構を明らかにすることを目的に研究を行なった。 本年度は、ショウジョウバエをモデル系として生細胞イメージングを行うことで、培養細胞だけでなく実際に生きた個体でも管状エンドソームが形成されることを実証した。方法は、GAL4-UASシステムにより管状エンドソームのマーカーとなるGFP-Rab10を筋細胞特異的に発現したショウジョウバエを作製し、三齢幼虫期から羽化直前の生きた状態の個体におけるGFP-Rab10の動態を共焦点蛍光顕微鏡により観察した。その結果として、GFP-Rab10陽性の管状エンドソームは腹斜筋の発生過程において顕著に形成されることが明らかとなった。さらに、興味深いことに、GFP-Rab10は最終的に、細胞膜が細胞内部に陥入した構造(T管)様の局在を示した。このことから、管状エンドソームは従来考えられてきたリサイクリングエンドソームとして機能するだけでなく、T管の前駆体(膜成分の供給)としても働くという全く予想外の役割が示唆された。今後はこの可能性に関しても検証したい。
|