研究課題/領域番号 |
19J00583
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
白川 公亮 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 心筋梗塞 / マクロファージ / オステオポンチン |
研究実績の概要 |
本研究テーマは、創傷治癒に必須の分子であるオステオポンチン産生マクロファージの分化機序やその制御機構を解明し、この細胞を標的とすることで、免疫学的観点から心筋梗塞後急性期の創傷治癒・線維化と慢性期の心臓リモデリングに対する新規治療法の開発を目指すことである。また、生活習慣病の疾患背景にある肥満と加齢の病態が心臓の創傷治癒やリモデリングに与える影響を免疫学的に解明するとともに、免疫学的心不全治療法を開発することを目的としている。申請書の予定通り、採用初年度である本年度は、梗塞後壊死心筋細胞とMerTKシグナルを介したオステオポンチン産生マクロファージの分化機序の解明を目的として実験を行った。オステオポンチンをコードする遺伝子であるSpp1 EGFP knock-in reporterマウスの心筋梗塞モデルの解析を実施した。心筋梗塞後day3の梗塞巣に存在する免疫細胞をFlow cytomeryで解析し、ガレクチン3とMerTKを高発現した心臓マクロファージがオステオポンチンの主要な産生源であることが明らかになった。また、このマクロファージのサブセットは、心筋梗塞後の壊死細胞クリアランスに必須であり、その分化経路においてSTAT3とERKシグナルが必須であることを明らかにした。心筋梗塞後のM-CSF投与はオステオポンチン産生マクロファージの分化誘導を促進することで創傷治癒を促進し、将来的な心筋リモデリングの抑制及び慢性心不全の予後改善に大いに期待できる分子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画通り、心筋梗塞後マクロファージの詳細な分化機序を解明し現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
心筋梗塞後の死細胞クリアランスに重要なMerTKという分子に注目し、オステオポンチン産生マクロファージの誘導機序を解明する。 次に、肥満に伴うマクロファージのC型レクチン受容体のMincle活性化は異所性脂肪沈着と内臓脂肪の炎症を惹起しており、近年、損傷した細胞から分泌されるβ-glucosylceramideがMincleの活性化因子として同定された。肥満や加齢に伴う異所性脂肪沈着に注目して研究を行う。100週齢加齢マウスと18週齢高脂肪食負荷マウスの心臓周囲脂肪組織の老化T細胞やマクロファージを中心とした免疫細胞の動態をFACSで解析する 。左前下行枝結紮心筋梗塞マウスの心臓周囲脂肪組織除去術や内臓脂肪への免疫細胞移植、Mincle活性化因子であるトレハロースジミコール酸やβ-glucosylceramideを投与し、心エコー、病理学的及びqtPCR、ウエスタンブロット法により創傷治癒過程及びリモデリングを評価する。
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