研究課題
植物は細胞膜型の免疫センサーと細胞内型の免疫センサーによって、病原体の感染を認識して免疫応答を誘導する。細胞膜型の免疫センサーは病原体由来の分子パターン(PAMP、pathogen-associated molecular pattern)を認識して、さまざまな免疫反応を誘導する。一方で細胞内型の免疫センサーはNLR型受容体(nucleotide-binding domain leucine-rich repeat containing receptor)と呼ばれ、病原体が感染のために分泌する病原因子(エフェクター)を認識して、より強力な免疫応答を誘導する。昨年度までの成果から複数のエフェクター候補が、PAMP処理で誘導される免疫応答の一つである活性酸素生産を抑制できることが分かっていた。そこで、本年度はエフェクター候補がNLR型受容体を介した免疫応答を抑制できるかどうかを検証した。その結果、複数のエフェクター候補がこれら2つの異なる免疫誘導機構をともに抑制できることが分かった。さらに酵母ツーハイブリッドスクリーニングの結果から、これらのエフェクターのうち、1つは機能未知なカルシウム結合タンパク質を標的としていることが示唆された。そこで、このカルシウム結合タンパク質を一過的に発現させた植物を用いて、植物免疫に与える影響を調べたところ、PAMP誘導性の活性酸素生産が亢進されることが示された。以上の結果から、線虫は免疫応答を正に制御するカルシウム結合タンパク質を標的としたエフェクターを分泌することで、免疫を抑制し、寄生を成立させている可能性が示唆された。今後、さらなる解析を進めることで、エフェクター及び標的タンパク質の機能を分子レベルで明らかにする予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、Ma本州とMa沖縄のゲノム・トランスクリプトーム情報をベースに絞り込んだエフェクター候補について、機能解析を行なった。さまざまな手法を用いて、エフェクター候補が植物免疫に及ぼす影響とその分子機能を検証したところ、免疫に関わる機能未知の植物タンパク質を標的とするエフェクター候補が見つかってきている。以上のように、おおむね当初の計画通りに研究が進展している。
最終年度は標的因子が見つかったエフェクター候補について、標的因子とエフェクターの両方向から詳細な機能解析を進める。標的因子については、遺伝子欠損株と遺伝子過剰発現株を作出して、免疫応答における標的因子の役割を明らかにする。すでにいくつかの標的因子については欠損株が準備できている。同時に、エフェクターを植物に発現させた形質転換株を作出し、形質転換株の免疫機能を解析する。また、Ma本州とMa沖縄のゲノム・トランスクリプトーム情報の比較に基づいて、病原性の違いに関与するエフェクターを明らかにする。
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