• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

植物寄生線虫による植物免疫抑制機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19J00655
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

佐藤 一輝  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2022-03-31
キーワード植物寄生線虫 / ネコブセンチュウ / 植物免疫 / エフェクター / 抵抗性植物
研究実績の概要

植物は細胞膜型の免疫センサーと細胞内型の免疫センサーによって、病原体の感染を認識して免疫応答を誘導する。細胞膜型の免疫センサーは病原体由来の分子パターン(PAMP、pathogen-associated molecular pattern)を認識して、さまざまな免疫反応を誘導する。一方で細胞内型の免疫センサーはNLR型受容体(nucleotide-binding domain leucine-rich repeat containing receptor)と呼ばれ、病原体が感染のために分泌する病原因子(エフェクター)を認識して、より強力な免疫応答を誘導する。昨年度までの成果から複数のエフェクター候補が、PAMP処理で誘導される免疫応答の一つである活性酸素生産を抑制できることが分かっていた。そこで、本年度はエフェクター候補がNLR型受容体を介した免疫応答を抑制できるかどうかを検証した。その結果、複数のエフェクター候補がこれら2つの異なる免疫誘導機構をともに抑制できることが分かった。さらに酵母ツーハイブリッドスクリーニングの結果から、これらのエフェクターのうち、1つは機能未知なカルシウム結合タンパク質を標的としていることが示唆された。そこで、このカルシウム結合タンパク質を一過的に発現させた植物を用いて、植物免疫に与える影響を調べたところ、PAMP誘導性の活性酸素生産が亢進されることが示された。
以上の結果から、線虫は免疫応答を正に制御するカルシウム結合タンパク質を標的としたエフェクターを分泌することで、免疫を抑制し、寄生を成立させている可能性が示唆された。今後、さらなる解析を進めることで、エフェクター及び標的タンパク質の機能を分子レベルで明らかにする予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、Ma本州とMa沖縄のゲノム・トランスクリプトーム情報をベースに絞り込んだエフェクター候補について、機能解析を行なった。さまざまな手法を用いて、エフェクター候補が植物免疫に及ぼす影響とその分子機能を検証したところ、免疫に関わる機能未知の植物タンパク質を標的とするエフェクター候補が見つかってきている。以上のように、おおむね当初の計画通りに研究が進展している。

今後の研究の推進方策

最終年度は標的因子が見つかったエフェクター候補について、標的因子とエフェクターの両方向から詳細な機能解析を進める。標的因子については、遺伝子欠損株と遺伝子過剰発現株を作出して、免疫応答における標的因子の役割を明らかにする。すでにいくつかの標的因子については欠損株が準備できている。同時に、エフェクターを植物に発現させた形質転換株を作出し、形質転換株の免疫機能を解析する。また、Ma本州とMa沖縄のゲノム・トランスクリプトーム情報の比較に基づいて、病原性の違いに関与するエフェクターを明らかにする。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Bonn(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      University of Bonn
  • [国際共同研究] University of California, Davis/The University of Alabama at Birmingham(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of California, Davis/The University of Alabama at Birmingham
  • [国際共同研究] フランス国立農学研究所(INRA)(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      フランス国立農学研究所(INRA)
  • [国際共同研究] University of Cambridge(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Cambridge
  • [学会発表] 植物免疫を抑制するネコブセンチュウエフェクターの探索と機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      佐藤一輝,門田康弘, Gan Pamela, 植原健人, 尾納隆大, 山口勝司, 市橋泰範, 岩堀英晶, 槇紀子, 重信秀治, 鈴木孝征, M. Shahid Mukhtar, 白須賢
    • 学会等名
      令和3年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] Screening for the root-knot nematode effectors that suppress plant immunity2021

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Sato, Yasuhiro Kadota, Pamela Gan, Taketo Uehara, Takahiro Bino, Katsushi Yamaguchi, Yasunori Ichihashi, Hideaki Iwahori, Noriko Maki, Shuji Shigenobu, Takamasa Suzuki, Shahid M. Mukhtar, Ken Shirasu
    • 学会等名
      第62回日本植物生理学会大会
  • [学会発表] 線虫と植物の攻防を分子レベルで読み解く2020

    • 著者名/発表者名
      佐藤一輝
    • 学会等名
      線虫学ミーティング2020
    • 招待講演
  • [備考] 理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループ

    • URL

      http://plantimmunity.riken.jp/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi