本研究は、教会堂に関する史料のほとんど残されていない中期(9世紀から12世紀)におけるビザンティンの教会堂について、教会堂の内部に残された壁画の配置、即ち壁画の装飾プログラムを把握することを通じて、儀礼空間の特質や教会堂の建築的な機能、および具体的な形態を捉え、ビザンティンの教会堂における建築的形態と儀礼空間の関係性を明らかにする研究である。 次年度となる本年度は、初年度同様に研究を行うために必要なデータの収集を行う予定であった。しかし新型コロナウィルスの世界的な流行はまったく収まる様子をみせず、当初予定していた海外調査に関しては全て断念せざるを得なかった。こうした状況下で、本年度はこれまでに収集したデータを整理すると共に、そうしたデータから建築的空間と儀礼関係の関係を捉えるために何が必要か考察する点に注力した。その中で、研究資料として三次元モデル作成の手法を開発することに重点を置くこととした。そのため当初予定されていた教会堂の情報収集という点では十分とは言えないものの、国内学会での四度にわたる発表を通じての他の研究者との議論から得られた知見をもとに、本研究課題を分析するために最適な三次元モデルの作成方法に関して一定の目処がついたといえる。 以上と平行して、海外調査が行えない中で、三次元モデル作成のための写真撮影や計測手法の習熟に努めると共に、調査機材を拡充して新型コロナウイルスがおさまり次第、調査を速やかに行えるように準備を行った。
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