研究課題
本年度は南極アイスコア中のΔ17O(SO4)値の分析に注力した。南極ドームふじ近傍で掘削された浅層アイスコア試料(過去約2000年分)の提供を受け、コア表面の汚染除去作業、溶存硫酸イオンの精製・分離、およびΔ17O(SO4)値の測定をすべて完了した。結果、Δ17O(SO4)値は過去2000年間にかけて3-5‰の範囲で有意な増減を示し、西南極のアイスコアを分析した先行研究データ(2-4‰)とは異なる傾向が観測された。これに加えて、前年度に発見した「大気や雪中において、メタンスルホン酸(MSA)の酸化によってΔ17O(SO4)値が特異的に高い硫酸が生成される」という知見を踏まえ、同試料中のMSAイオン濃度の分析を実施した。さらに当初の計画に加え、火山噴火由来の硫酸の寄与を検討するため、マルチコレクター型誘導結合プラズマ質量分析法(MC-ICP-MS、東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻共用機器を利用)により、同試料のδ34S(SO4)値の分析も実施した。以上を含む化学指標との相関解析を行なった結果、いずれもΔ17O(SO4)値との明確な相関は見られなかった。このことから、アイスコア中のΔ17O(SO4)値は、①硫酸生成に関わる大気酸化反応経路の変化、②雪中でのMSA酸化による硫酸生成の寄与率、③大気への硫黄供給源の違い、といった情報を複合的に反映している可能性が示唆された。また本年度は、前年度に発見した指標変質に関する知見を、国際学会において発表した。この知見は本研究の「Δ17O(SO4)値の変動要因の理解」という視点に限らず、「極域大気中のエアロゾル生成過程の理解」にも重要な研究として評価され、大気化学分野の国際学会において若手研究者ポスター賞を受賞した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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