これまでに行ってきたシングルセル解析および阻害剤を用いた解析により、遊走時の肺NE細胞で発現しているTrpc4が、肺の気管支上の正しい位置にNEBを形成するのに必要であることが示唆されてきた。そこで今年度は、Trpc4ノックアウトマウスを作製し、これの解析を進めた。結果、E18.5のTrpc4ノックアウトマウス胎児肺においてNEB形成に異常が生じることがわかった。しかし、同様にNEB形成異常を呈するマウスとして前年度まで解析を進めてきたSlit3ノックアウトマウスほどの過呼吸は示さず、Trpc4ノックアウトマウスは交配も行うことができ、育児もできることがわかった。これはSlit3とTrpc4の発現パターンの違いによることが考えられる。Slit3は肺において平滑筋で発現していることが確認できており、脳において特定部位で単独発現しているとの報告がされている。一方Trpc4は肺では肺NE細胞に一過性の発現を示すことが確認できており、脳では様々な部位に発現しているとの報告があるが、ファミリータンパク質であるTrpc5も同様に発現しているためTrpc4をノックアウトしてもTrpc5によって補完されることで行動異常は生じない可能性が考えられる。今後は、Trpc4ノックアウトマウスより単離した肺NE細胞を用いて、培養環境下で遊走能を解析することでTrpc4を介した肺NE細胞の遊走メカニズムを明らかにしたい。
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