研究実績の概要 |
本研究の目的は、農業にまつわる世代内正義(社会的・経済的不平等の是正)/世代間正義( 次世代への良好な環境の継承)の達成が可能となる条件を明らかにし、双方を含んだ多元的な正義実現のための農業モデルを提示することである。現在、農産物のコモディティ化(ある商品カテゴリ内での同質化が進むことで、価格差によってしか商品が差異化できなくなった状態)が進行しつつある。本研究では、こうしたコモディティ化からの脱却が世代内/世代間正義の達成に影響を与えるのではないかとして、日米での比較調査を行う。とくに、世代内正義と世代間正義で はその実現過程や論拠となる価値観が異なるという仮説から出発し、日本のコメ市場における低環境負荷農法の普及状況と、米国カリフォルニア州でのコミュニティ支援型農業(Community Supported Agriculture, 以下 CSAとする)の多様化に着目する。 以上のような目的のもと、本年度前半は文献調査を集中的におこなった。その結果、本研究の調査対象のひとつである地域農協では、近年地域農業の振興という側面から低環境負荷農法を採用しているところが増加していることがあきらかとなった。 つぎに、本研究のもうひとつの調査対象であるカリフォルニア州におけるCSAについても、文献調査をおこないつつ、本年度後半に現地調査をおこなった。現地調査では、産直市の一種であるファーマーズマーケットに出店している農業者で、かつCSAもおこなっている者に聞き取り調査をおこなった。
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