研究課題/領域番号 |
19J00796
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
宮田 憲一 公益財団法人がん研究会, 公益財団法人がん研究会 がん研究所 細胞老化プロジェクト, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 反復配列 / SASP |
研究実績の概要 |
近年、我が国の平均寿命は延長し続け超高齢化社会へと突入し、がんを含む加齢性疾患の罹患率の上昇が喫緊の課題である。老化細胞は加齢と伴に体内に蓄積してゆくことから、加齢によるがんの罹患率上昇に関与していることが示唆されている。本研究では、老化細胞で特異的に高発現しているノンコーディングRNA(SA-ncRNA; Senescence-associated noncoding RNA)が染色体不安定性を誘発し発がん機構を促進する分子メカニズムを明らかにし、老化細胞特異的なノンコーディングRNAを標的とした新しいがんの予防法・治療法の開発へ繋げる事を目的としている。 本年度は先ず、研究代表者は、SAncRNAとその結合蛋白質SRBP(SAncRNA-Binding Protein)に関する研究を進めた。まず、SRBPはDNA結合タンパク質であったため、SAncRNAがSRBP―DNA結合へ与える影響をEMSA(Electrophoretic mobility shift assay) とChIP-Seq(Chromatin immunoprecipitation-sequence)により解析した。さらに、SAncRNAによるSRBPの機能阻害がゲノム高次構造を変化させる可能性を3C(Chromosome conformation capture)-qPCRにより、また、この機能阻害による異常が遺伝子発現変化を惹起する可能性をRNA-Seqにより網羅的な解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、細胞老化の過程で発現上昇するノンコーディングRNA(SAncRNA;senescence-associated non-coding RNA)のさらなる解析を進め、SAncRNAがDNA結合タンパク質であるSAncRNA結合蛋白質SRBP(SAncRNA-Binding Protein)のDNA結合能を抑制することをEMSA(Electrophoretic mobility shift assay)法によって明らかにした。また、 SAncRNAがSRBPのDNA結合配列を著しく変化させることをChIP-Seq(Chromatin immunoprecipitation-sequence ChIP-Seq)法により明らかにした。さらに、SAncRNAによるSRBPの機能阻害がゲノム高次構造を変化させ、これらの異常が遺伝子発現変化を惹起することまで3C(Chromosome conformation capture)-qPCRやRNA-Seq法等を組み合わせる事で明らかにした。 以上の成果より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、計画通り、老化細胞が分泌する細胞外分泌膜小胞に格納されているSAncRNAが周囲の細胞に取り込まれて染色体不安定性や異常な遺伝子発現変化を引き起こす可能性を明らかにする。さらに、実際の腫瘍において、SAncRNAの発現をRNA-in situ hybridization (ISH)法等を用いて解析を行うことで、SAncRNAによる発がん機構の解明、SAncRNAを標的とした新しいがんの予防法・治療法の開発に向けた方策を得たい。
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