結晶成長プロセス・インフォマティクスの概念実証を、AlN(窒化アルミニウム)固相成長プロセスを対象として進めた。ここでは簡潔に、プロセス設定条件と成長した結晶の品質を直接関連付けることが可能であるか検討した。蓄積されたデータの解析・可視化から、使用した材料の製造メーカー・ロット・使用度といったプロセスの外部因子が大きく影響することを明らかにした。そこで、外部因子まで入力として考慮し、機械学習アルゴリズム(勾配ブースティング決定木)を適用したところ、結晶品質(X線回折半値幅)を十分高精度に予測することに成功した。この予測器は、プロセス設定条件のローカルな最適化に役立てることができる。 一方で、より探索的なプロセス設計、さらには装置依存を排した相関の解明には、デジタルツインやリアルタイム計測から取得される成長炉内の各種状態を、結晶品質と関連付けることが必要である。成長炉内のダイナミクスから特徴抽出する手法として、Koopman mode decomposition(KMD)/dynamic mode decomposition(DMD)の適用を検討してきた。本年度は、非線形性の高い時空間データからKoopman固有値・モードを高精度に推定するアルゴリズムを提案し、プラズマ乱流データに適用した。本手法は、ステップダイナミクス等の結晶成長炉内の動的現象にも有効であると考えており、炉内状態から結晶品質を正確に予測するために必要な要素技術である。
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