研究課題
器官再生において形態形成遺伝子が再活性化される際にはドラスティックな時空間的発現パターンを示すことが知られており、この時空間的に遷移する遺伝子発現の制御を可能にすることが再生メカニズムの解明に必須である。本研究課題では、CRISPR-Casシステムとヒートショック応答を応用して時空間的に内在性遺伝子を誘導する人工転写因子システムを開発すること、さらにこの技術を応用して器官再生に関与する遺伝子群の解析を行い、器官再生の分子メカニズムを解明することを目的としている。イモリ全転写産物データセットからイモリヒートショック転写因子HSF1を同定し、本研究課題の中核となる技術であるdCas-SAMシステムを応用したヒートショック誘導型人工転写因子に必要なコンストラクトセットの作製を行った。また、このシステムをin vitroで評価するため、イモリ培養細胞の培養条件の検討を行なった。本システムを用いて器官再生に重要な遺伝子を同定しin vivo解析を行うため、複数の大学・研究機関と共同で大規模なRNA-seq解析による遺伝子カタログセットを発表した。加えて、更なるトランスクリプトームデータの充実を目指し、ロングリードシークエンシングによるIso-seq解析を用いた完全長転写産物配列の取得も進めた。また、ゲノム編集個体の表現型を評価するため、次世代シークエンサーを用いたジェノタイピングワークフローも開発した。
2: おおむね順調に進展している
トランスクリプトーム解析によって作製した遺伝子カタログをもとにイモリヒートショック転写因子HSF1を同定し、MCP-HSF1を含むヒートショック誘導型人工転写因子のコンストラクトセットを予定通り作製完了した。一方、イモリ培養細胞を用いてまずはin vitroでの評価を行う予定であったため、共同研究者から譲渡してもらった細胞株の培養条件の確立を行なった。しかしながら、哺乳類の培養細胞と比べて増殖速度が遅く、in vitroでの評価が難しいという結論に至った。哺乳類培養細胞での評価も考えたが、本研究のゴールはあくまでもイモリ生体でのin vivo解析であるため、次年度は受精卵インジェクションやエレクトロポレーションによるin vivoによる評価に切り替える。本研究の遂行に必要なトランスクリプトーム解析が一段と進み、次世代シークエンサーを用いたゲノム編集個体のジェノタイピング解析法を確立したことは、研究コミュニティへの大きな貢献となっている。
本年度作製した人工転写因子コンストラクトをイモリ受精卵に導入し、ルシフェラーゼアッセイにより作製したコンストラクトのin vivo評価を行う。本研究を遂行する上で再生に関与する遺伝子群の遺伝子構造やプロモーター配列の情報は必要不可欠である。特にプロモーターや転写開始点の更なる情報を得るため、現在進行中のRNA-seq、Iso-seq解析に加え、ゲノム解析も行う予定である(研究コンソーシアムとの共同研究)。これらの実験条件が成立次第、再生関連遺伝子群のin vivo解析に移りたい。
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Genes to Cells
巻: - ページ: -
10.1111/gtc.12775
DNA Research
巻: 3 ページ: 217-229
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https://www.nibb.ac.jp/press/2019/04/24.html