本研究の目的は、活動銀河核(AGN)とcircum nuclear disk(CND)での星形成の両者が活発なAGN-星形成compositeの性質の調査である。そのために、近傍のAGN-星形成compositeについて、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)でミリ波領域の一酸化炭素(CO)ガス純回転輝線を観測し、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で近赤外線領域のCOガス振動回転吸収線・CO氷吸収バンドを観測することを予定していた。しかし、JWSTの打ち上げが大幅に延期された(2021年12月に実施)ことを受け、既存データを用いた研究を行った。 埋もれたAGNと活発な星形成を擁する後期合体銀河IRAS 17208-0014について、ALMAで観測したCOの純回転輝線・吸収線と一硫化炭素(CS)の純回転吸収線、そして赤外線天文衛星「あかり」で観測したCO振動回転吸収線をもとに、中心領域の構造を議論した。AGN位置で観測されたCO・CSの吸収線の強度は、その周囲においてCO輝線で観測されたのと同一のガスでは説明できず、中心核近傍に集中したガス分布があることを示唆した。一方、CO振動回転吸収線の強度も多量の高温ガスの存在を示しており、これは前述の集中ガス分布の内部にあると考えられる。IRAS 17208-0014以外の銀河での観測結果とも比べることで、CO振動回転吸収線がAGNが埋もれているほど高頻度に観測されることを見出し、この吸収線の存在が、成長段階AGN種族の特徴の1つであると提案した。CO・CSの純回転遷移が吸収線として検出されたという結果、そしてそれをCO振動回転遷移と比較するという研究は他に例が無く、非常にユニークな成果となっている。 今年度は上記の結果を1編の主著論文(査読有)として出版したほか、関連する研究について6編の共著論文(査読有)を出版した。
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