研究課題
計画通り、AAV-PHP.eBを静脈注射することによって遺伝子を発現する実験系を確立した。また、プロトコル整理と普及を行い、自身が確立した系を研究室の主要な実験方法にすることに貢献した。また、10種のプロモーター候補配列をクローニングし、透明化を用いて、プロモーター候補配列によって制御される蛍光タンパク質の発現パターン評価を行った。結果、それぞれ特徴的な発現パターンを示したものの、いずれも期待していたよりも発現の特異性が低いことがわかった。上記の結果を踏まえ、予備的なアプローチとして、細胞種特異的に組み換えタンパク質Creを発現する遺伝子改変動物を数種類見繕い、導入を行った。これにより、Cre依存的に組み変わることによって初めて搭載遺伝子を発現するようなウイルスを適用すれば、特定の脳領域にAAVに搭載した遺伝子を発現可能となった。並行して、発現させることによって睡眠表現型を変化させるための候補分子として、ノックアウトによって睡眠表現型が変化することが知られている分子、CaMK2aをAAV-PHP.eBによって発現させた。結果、CaMK2aの疑似リン酸化状態依存的に睡眠表現型が変化することを、呼吸パターン、および脳波のパターンから同定した。更に、in vivoでCaMK2aが取る状態と睡眠表現型の対応付けを取るためのスクリーニング系を提案し、実際に検証をすることで、CaMK2aに未知の制御領域があり得ることを示唆した。これらの研究成果により、CaMK2aが眠気を測定するための分子メカニズムを解明した。
3: やや遅れている
研究成果自体は期待以上に出たものの、申請者が当初提案した研究とは乖離が生じている。
表現型を制御する脳領域をAll-Viralに解明するためには、ウイルスに搭載可能で特徴的な発現パターンを示すプロモーター/エンハンサーを同定するか、特徴的なトロピズムを示すウイルスカプシドを作成することが必要である。これを実現するために、配列と表現型のmultiplexな比較を可能とする、シングルセル解析の技術を習得し、応用する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)
Nature Communications
巻: 11 ページ: 1104
10.1038/s41467-020-14786-z
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0111_00016.html
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/topics.html?key=1582856932