前年度から引き続き、海外の研究室で研究を行った。本年度は、前年度までに当該研究室に導入した新規ウイルスセロタイプ作成系、およびその発現パターンの評価システムを組み合わせ、新規ウイルスセロタイプが特定の細胞種指向性を持った感染パターンを示すことを確認した。また、このセロタイプと既存のセロタイプを利用して、動物に対して細胞種特異的、かつpostnatalに遺伝学的な操作を加えることに成功した。現在、本セロタイプによる操作の有用性とその限界を様々な評価系によって詳細に検討している。
また、これまではアデノ随伴ウイルスを基にしたウイルスベクターを作成していたが、今年度からはレンチウイルスを基にしたベクターの作成も開始した。レンチウイルスはアデノ随伴ウイルスよりも長い核酸配列を搭載可能であるため、SpCas9等、ゲノム編集に有用な巨大タンパク質を感染した細胞に発現させることが可能である。ただし、アデノ随伴ウイルスとは異なり、レンチウイルスの感染パターンを柔軟に指向進化させるような実験系は未だ確立されていない。
そこで現在、様々な変異を入れたエンベロープタンパク質(ウイルスが感染する細胞種を規定するタンパク質)が持つ感染パターンを一挙に解析できる系の構築に取り組んでいる。今後、安全性審査委員会から変異ウイルス作成の許可が得られ次第、in vitro および in vivoでの感染パターンの評価実験を行う。
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