昨年度に続き、新型コロナ感染症の影響により海外調査困難な状況が継続し、活動に大きな制約が生じた。しかし、昨年度の「今後の研究の推進方策」で述べた通り柔軟に研究計画を見直すことで、一定の研究成果を挙げることができた。まず、研究目的の一点目である「アフリカゾウの保全と地域の発展につながる獣害対策手法の構築」について、当初予定していたゾウの生態調査に基づく獣害発生メカニズムの研究や社会実装のための現地活動を行うことはできなかったものの、住民の知識と価値観に着目した獣害対策については、一昨年度の現地調査の結果を基に、現状と今後に向けた提案を国際学術論文に公表することができた。次に、目的の二点目であった「アフリカゾウの保全と象牙利用に関する国際的な会合での議論と地域住民の知識・意向とのギャップの検証」について、住民の知識・意向についての現地調査が実施できず、定量的な分析には至らなかったものの、これまでのワシントン条約関連会合への継続的な参加で得てきた知見を活かし、アフリカゾウ保全の政策・規制の議論において科学的事実や住民オーナーシップが軽視されやすい現状について警鐘を鳴らすコメントペーパーを国際学術誌に掲載した。また、アフリカの野生動物保全における科学と在来知の統合の重要性について、国際学術会合のテーマセッションで発表した。その他、JSTやNGO主催の一般向けシンポジウムで、研究や科学的助言活動を紹介するアウトリーチ活動を行った。最後に、年度末にガボン・タンザニアの2か国への渡航を実現させ、カウンターパート機関と現地情報の共有と研究計画の見直しを行い、今後の共同研究の継続・発展のための関係者調整を進めることができた。今後、本研究の成果と期間中に構築した共同研究体制を活かし、これらの国々との国際共同研究を進めていく予定である。
|