現在の太陽系形成モデルにおいて、太陽系形成直後に物質が大移動したとするモデルは観測やシミュレーションにおいて広く支持されている。しかし、そのモデルを直接支持する物質科学的な証拠は今の所見つかっていない。一方,太陽系内で物質の撹乱が起きると,天体同士が衝突し,衝撃イベントが数多く発生すると考えられている。隕石はタイプ毎に特定の時期に集中して衝撃イベントを経験したことが予想されているが、報告数が少なく物質移動との関連は明らかでない。本研究では多くの隕石において、その衝撃変成組織観察及び希ガス年代測定を行うことで、いつ、どのような衝突イベントが起きたのかを明らかにし、小天体の動きや起動の乱れの時代変化を物質科学的側面から明らかにすることを目的とした。 これまで35個の隕石の衝撃変成組織とAr/Ar年代を詳細に分析し,衝撃変成作用,つまり天体衝突現象の時代変化を調べた。その結果,高圧鉱物を含む隕石や強い衝撃変成作用を含む隕石は比較的最近の衝撃イベントを記録していることが明らかとなった。これまでの研究で報告がなかった20~30億年程度の年代を示す隕石もいくつか発見され,分析数を増やすことの重要性を確認した。また,衝撃変成組織をかき消してしまうくらい熱の影響が大きい衝撃イベントが42億年程度まで発生しており,その後は見られなくなったことが新たに明らかとなった。これらは天体衝突現象が時代とともに変化してきたことを示唆しており,今後同様の方針でさらなる分析を行うことで太陽系形成に伴う物質移動の明確な証拠を掴むことができると考えられる。
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