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2019 年度 実績報告書

角層バリア形成の分子基盤の解析

研究課題

研究課題/領域番号 19J00968
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

葛野 菜々子  国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2022-03-31
キーワードSyntaxin-4 / 皮膚表皮 / 角化
研究実績の概要

本研究では、ウイルスや化学物質など外部環境から身を保護するバリアとして、個体の生命維持に必須である皮膚表皮角層バリアが機能するために重要と考えられているコーニファイドエンベロープ (CE) 形成の分子基盤を明らかにすることにより、角層バリアが破綻した皮膚病変の新たな治療法の開発に貢献することを目的としている。
そのために当該年度はまず、生体内のCE形成を観察する方法の確立に取り掛かった。CEが形成されるのは、皮膚表皮最外層である角層の直下に位置するSG1細胞が角質へ分化 (角化) する過程であると言われており、正常な角化では、角化過程で細胞内の核が消失する。そこで、核を蛍光で標識した生きたマウスのSG1細胞の核が消失する過程を、共焦点顕微鏡で安定的に撮影する方法を確立した。この方法を用いれば、CE形成だけでなく角化過程の他の様々な現象も追跡することが可能であり、様々な新規の発見に繋がると考えられる。
また、表皮培養細胞を用いた実験系でCE形成に関与することが明らかになっている遺伝子 (Syntaxin-4) を、表皮特異的にノックアウトしたマウスを2種類作成した。今後このマウスを用いて、CE形成過程で異常が生じた場合にどのような変化が生じるのかを解析することにより、CE形成と角層バリア形成との関連を明らかにする。さらに、Syntaxin-4以外のCE形成に重要な因子を調べるためにも、生体マウスSG1細胞の特定の遺伝子の発現を従来よりも短期間で簡便に抑制する方法の確立に取り掛かった。この方法が確立すれば角化過程の様々な現象を従来よりも短期間で簡便に解析することが可能となり、角化に関する研究が飛躍的に進むと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度において、まず、マウス生体内のCE形成過程を共焦点顕微鏡下で観察する方法の確立を行った。角化過程でCEが形成されることから、同じく角化過程で生じる核の消失を指標とし、その過程を観察可能な方法を確立することを目指し、最適な麻酔の方法や条件、マウスの設置方法、撮影条件などの検討を行った。その結果、生きたままのマウスの皮膚表皮SG1細胞の核消失過程を共焦点顕微鏡で安定的に撮影することが可能となった。
また、in vitroの実験系でCE形成に関与することが明らかになっている、Syntaxin-4を皮膚表皮の上層特異的にノックアウトした2種類マウスを作成した。
加えて、生体内SG1細胞の特定の遺伝子の発現を従来よりも簡便に短期間で制御する方法の確立を行った。当初計画していた方法であるdCas9、標的遺伝子のsgRNAおよび蛍光タンパク質を含むプラスミドを、生体マウス皮膚へ皮内注射することにより標的遺伝子の発現を抑制するという方法は上手くいかなかった。そこで、前回のプラスミドからdCas9を除いたプラスミドを作成し、そのプラスミドをCas9およびEGFPを発現しているマウス (Cas9-EGFPマウス) の皮膚へ皮内注射する方法を試した。EGFPを標的とし、既にEGFPの発現を抑制することが論文で報告されているsgRNA配列を含むプラスミドを作成した。このプラスミドの溶液をCas9-EGFPマウスの皮膚へ導入した。その結果、プラスミドが導入されている細胞においてEGFPの発現が低下していることが共焦点顕微鏡による観察により確認できた。そこでこの系をCE形成の解析に用いるため、Cas9-EGFPマウスのEGFPを欠損させたCas9マウスを作成した。このマウスを用いることで、CE形成過程の追跡にEGFP蛍光を用いることが可能となった。以上のように順調に研究を進めている。

今後の研究の推進方策

表皮培養細胞を用いた研究により、Syntaxin-4はCE形成に影響を及ぼすことが明らかになっている。皮膚表皮では最下層の基底層で細胞が分裂し、上へと押し上げられ有棘層、顆粒層、角質層へと移行する。Syntaxin-4は皮膚表皮においてCEが形成される顆粒層だけでなく、基底層や有棘層にも発現している。そこで、マウス生体内におけるSyntaxin-4のCE形成への影響のみに注目するために、表皮の特定の層から上で特異的にSyntaxin-4をノックアウトしたマウスを作成している。既に当該年度に2種類のマウスを作成しており、次年度はこれらのマウスの皮膚表現系解析を行う。具体的には、表皮水分蒸散量測定・角層水分量測定・皮膚切片の解析を行う。皮膚切片の解析においては、HE染色や免疫蛍光染色に加え、電子顕微鏡を用いて、同一試料の同一箇所を蛍光顕微鏡と電子顕微鏡とで相関して観察・解析することが可能な光-電子相関顕微鏡法を用いて微小構造を詳細に解析する。さらに電子顕微鏡で連続切片を観察し、3D再構築を行うことで立体的な微細構造を解析する。現在作成中の1種類のマウスに関しても同様の解析を行う予定である。また従来よりも簡便に短期間で、マウス生体表皮細胞のCE形成に重要な新規候補遺伝子の発現を抑制し、その影響を解析することが可能な実験系の確立を進める。まずは、当該年度に作成したSyntaxin-4を標的とした複数の遺伝子発現抑制用のコンストラクトを、全身でCas9を発現しているマウスから抽出した細胞に導入し、標的遺伝子発現の抑制効果を調べる。最も抑制効果が高かったコンストラクトをCas9マウスに導入する。そのマウス皮膚表皮組織を解析し、表皮の特定の層からSyntaxin-4をノックアウトしたマウスと同様の結果が観察されるかを確認する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 3D in vivo imaging of the keratin filament network in the mouse stratum granulosum reveals profilaggrin-dependent regulation of keratin bundling.2019

    • 著者名/発表者名
      Usui K, Kadono N, Furuichi Y, Shiraga K, Saito T, Kawasaki H, Toyooka K, Tamura H, Kubo A, Amagai M, Matsuda T
    • 雑誌名

      J Dermatol Sci.

      巻: 94 ページ: pp346-349

    • DOI

      10.1016/j.jdermsci.2019.04.006

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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