研究課題/領域番号 |
19J01006
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
関野 裕太 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 冷却原子気体 / 強相関量子多体系 / 1次元量子系 / メゾスコピック輸送 |
研究実績の概要 |
今年度は、主に強結合フェルミ原子気体のメゾスコピックスピン輸送の理論研究を行なった。具体的には、トンネルハミルトニアンの手法により、2つの強結合フェルミ気体を量子ポイントコンタクトで接合した場合の非平衡定常状態でのスピン輸送を解析した。線形応答理論とT行列近所を用いてフェルミ気体が常流動状態の場合でのスピン流を計算し、次の2つの主要結果を得た。 (1) スピンバイアスが小さく気体の温度が超流動転移温度近傍の場合には、バルクの状態密度に擬ギャップが形成される。その結果、相互作用がない場合と比ベて、スピン流は大幅に抑制されることが明らかになった。 (2) スピンバイアスが大きい場合、バルクのスピン偏極は大きくなりマイノリティースピンの自由度はフェルミポーラロンとして理解できる。バルクでのポーラロン励起状態の出現により、マイノリティースピンの状態密度が増大し、量子ポイントコンタクトを流れるスピン流の量も増すことが明らかになった。 擬ギャップやポーラロン状態は冷却原子気体のみならず、固体電子系において活発に議論されている量子多体系での重要な話題である。上記の我々の結果は、量子ポイントコンタクトでのスピン流測定実験が擬ギャップやポーラロン励起状態のプローブとして有用であることを提言している。上記の結果まとめた論文を論文誌に投稿し、現在査読中である。 また、採用前からの継続研究である1次元での強結合ボース原子気体・フェルミ原子気体の相関関数における普遍関係式の研究も引き続き行なった。この研究については、学会発表を4件、セミナーを3件、招待講義を1件行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強結合フェルミ気体のメゾスコピックスピン輸送の研究において、擬ギャップやポーラロン励起との関連性を見出せたことが大きな進展であった。また、1次元ボース気体・フェルミ気体の相関関数の普遍関係式についても研究が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、非平衡量子クラスター展開の一般論の構築を行い、強結合原子気体の量子ポイントコンタクトでの輸送や、バルクでの輸送係数を計算する手法を確立することを考えている。また、ポーラロン励起状態が重要となる量子輸送についても調べる。さらに、1次元ボース気体・フェルミ気体の相関関数の研究を論文として出版する。
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備考 |
「1次元量子気体に関する普遍性」に関するセミナーを3ヶ所で行った。
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