研究課題
本研究では妊娠中の胎仔と母体をつなぐ胎盤に着目している。胎盤内にはさまざまな種類の細胞が存在しており、特に胎仔由来と母体由来の血管は近接しあうことで胎仔へ酸素や栄養物の相互運搬を行う。加齢母体では脱落膜分化、成長因子制御、および細胞外マトリックス構成に関する遺伝子発現量変動が報告されているが、詳細なメカニズムは不明なままである。本研究では既報のトランスクリプトーム解析から選定したいくつかの候補遺伝子について遺伝子欠損マウスの作製を行った。CRISPR/Cas9システムを用いて全タンパク質コード領域を欠損させるためにgRNAを設計し、受精卵にエレクトロポレーション(EP)を実施した。現在までに雌雄いずれからもヘテロ欠損マウスを得ているため、今後解析を進める予定である。加えて、本研究では自然加齢させた雌マウスを使用し、胎盤を形成する以前の卵子に対してもトランスクリプトーム解析を行った。得られた結果をもとに老化関連因子の同定を進めている。
2: おおむね順調に進展している
1. 胎盤関連遺伝子の遺伝子欠損マウスの作製第1年度目CRISPR/Cas9システムを用いてタンパク質コード領域を欠損させるために開始コドンの5’末端側と終止コドンの3’末端側に対してそれぞれgRNAを設計し、受精卵にエレクトロポレーション(EP)を行った。ジェノタイピングの結果、現在までに雌雄いずれからもヘテロマウスを得ている。加えて、データベースを用いて雌性生殖器に発現していると予想される複数遺伝子に着目しており、同様にCRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子欠損マウスを作製した。2. 卵子を用いたトランスクリプトーム解析成獣雄マウスと交配をしても産仔が得られないと報告されている8ヶ月齢マウスを用いて体外受精試験および卵子のトランスクリプトーム解析を行い、関連遺伝子の同定を行なっている。
1. 胎盤関連遺伝子の遺伝子欠損マウスの作製ヘテロマウスを用いてホモマウスを得るためにラインの維持を行い、雌ホモマウスと野生型雄マウスとの交配試験を始める予定である。また交配後の雌ホモマウスから日齢毎に胎盤を回収し、組織学的かついくつかのマーカー遺伝子を用いて胎盤形成能の比較・検討を行う。2. 卵子を用いたトランスクリプトーム解析先行研究では1年齢(12ヶ月齢)のマウスは妊娠可能だが胎盤の異常によって胎仔が得られないと報告されているが、実際はそれよりも前に加齢の影響が出始めているのではないかと考えている。今後はRNA-seqを用いた大規模解析の解析方法を習得しつつ、加齢よって変動する候補遺伝子の機能解析について進めていく予定である。加齢に伴って生じる母体の変化についての報告は乏しいため、本研究では胎盤特異的に発現している遺伝子に着目すると同時に胎盤形成に至る前段階の卵子や卵子周辺の細胞についても解析を進めたいと考えている。
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PLoS One
巻: 14 ページ: 0214687
10.1371/journal.pone.0214687