研究課題/領域番号 |
19J01106
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
大林 翼 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 物質循環研究領域, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ホソヘリカメムシ / Burkholderia / Tn-seq / 腸内共生 / 根圏 / 土壌細菌 / ダイズ |
研究実績の概要 |
本研究では、昆虫の共生細菌としては例外的に培養可能なB. insecticolaに対して、トランスポゾン挿入変異法と次世代シーケンス解析を組み合わせたTn-seq解析を行う。Tn-seq解析はバクテリアの全ゲノムに対して機能解析を行うことが可能であり、本研究では、B. insecticolaのカメムシ腸内への定着機構および土壌・植物への定着に必要な遺伝子を網羅的に探索し、昆虫・土壌・植物への定着機構を広範に比較することで、B. insecticolaの昆虫腸内への定着機構をより鮮明に描き出すことを目的としている。 研究1年目にあたる本年度は、(1)土壌およびダイズ根圏におけるB. insecitcolaのTn-seq解析、(2)標的遺伝子変異株の作製とその機能評価を行った。(1)についてはまず、発芽ダイズの根においてB. insecticolaが定着できる個体数を確認し、ダイズ根圏でTn-seq解析を行うためにはダイズ20個体が必要なことが明らかになった。次に、B. insecitcolaのトランスポゾン変異株ライブラリーをバルク土壌および発芽ダイズに接種し、培養30日後の土壌およびダイズ根圏を回収し、定着している変異株の回復培養を行った。培養した菌体からDNA抽出を行い、トランスポゾンの挿入部位を同定するために、Illumina NextSeqで次世代シーケンス解析(Tn-seq解析)を行った。(2)ホソヘリカメムシ中腸のTn-seq解析により発見されたカメムシ中腸における生育必須遺伝子として、125個の遺伝子が同定され、そのうち、13個の遺伝子に対してそれぞれ標的遺伝子変異株を作製した。作製した変異株について、カメムシへの単感染実験および野生株との競合感染実験を行い、変異株の共生能が低下していることを確認した。本研究によって得られた成果について国内外の学会において発表を行い、また論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、本研究の肝である土壌およびダイズ根圏におけるB. insecticolaのTn-seq解析を行い、十分なシーケンスリード数が得られたことから、Tn-seq解析は順調に遂行していると考えられる。また、標的遺伝子の作製およびその機能評価の方法を確立し、着実にカメムシ腸内における機能解析が進んでいることから、本研究課題は全体としておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定はTransitを用いて土壌およびダイズ根圏におけるB. insecticolaのTn-seq解析を行い、土壌およびダイズ根圏への定着に必要な遺伝子の同定を行う。また、それらの遺伝子を加えて、現在進めている標的遺伝子変異株の作製を行い、共生における機能評価を行っていく予定である。
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