研究課題/領域番号 |
19J01121
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
奥村 安寿子 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 未就学児 / 文字認識 / 到達基準 / 音韻意識 / 早期発見 |
研究実績の概要 |
未就学児の文字認識について、将来の読み困難を予測する評価基準、および文字認識の獲得に必要な認知機能を、縦断的および横断的な調査結果から検討した。 文字認識の評価基準については未就学児の縦断調査から、年長(就学前年)時点での文字認識が一定以下の到達度(ひらがな清音:45文字中、40文字未満)であると、小学校1年生時点で読み困難を示す確率が高い(80%以上)ことを明らかにした。この結果から、未就学児の文字認識について明確な到達目標が得られ、将来の読み困難を予測する指標が確立した。この成果は、教育分野の国際誌(査読付き)に掲載された。 文字認識の獲得に必要な認知機能については、本研究課題の開始以前から今年度までに4-6歳児、約1500名の横断データを収集した。このデータから、先述した文字認識の目標到達(ひらがな清音:45文字中、40文字以上)には、単語から音(モーラ)を抽出する能力が関わり、単語中の全位置(語頭・語尾・語中)でモーラを抽出できることが、文字認識の目標到達を強く予測することが示された。文字認識とモーラ抽出の関連は、月齢よりも大幅に強く、自然発達よりも特定の認知機能(音韻意識)の獲得が、文字認識の発達において規定因となることが明らかになった。 これらより、未就学児に対する読み困難の早期支援システムにおいて、要支援児を同定する基準が確立した。また、未就学児における文字認識の促進要因(モーラ抽出)が同定されたことから、幼稚園・保育園等の集団指導を通じて読み困難を予防するプログラムの構想が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的である、未就学児に対する読み困難の早期支援システムの社会実装に向けて、支援を要する未就学児を同定する方法を確立することができた。また、未就学児の文字認識について促進要因を同定したことから、予防プログラムの計画と実装が可能になった。これらより、早期支援システムの整備が目標通りに進んだことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
未就学児の文字認識を促進し、読み困難を予防するための集団指導プログラムを策定し、幼稚園・保育園等で実施する。また、指導プログラムを実施する前後に、文字認識の評価を行い、効果を検証する。その結果と、今年度までに確立した要支援児の同定基準等を統合し、研究協力関係にある自治体において、未就学児に対する読み困難の早期支援システムを実装する。これらの成果については、国際誌を中心に論文投稿や成果発表を行う。
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