研究課題/領域番号 |
19J01194
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
隠岐ー須賀 麻衣 名古屋大学, 法学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | プラトン / ルソー / 演劇 / 政治思想史 / 政治哲学 |
研究実績の概要 |
2020年度には、後述の研究業績の他に、2本の論文の執筆と、1つの学会報告のためのアブストラクト作成を行なったが、これらはすべて不採用となったため業績として記載することができなかった。しかしこれらは、公にすることはできなかったものの、本研究課題を進める上で重要な位置を占め、今後の研究の足掛かりとなるものであった。以下は、それらを加えた研究実施状況である。 (1)学会報告「劇場から街頭へ:熱狂の政治思想」:この報告は、研究課題申請時の研究計画(A)ルソー研究と(C)発表と論文執筆の一部に対応する研究成果と言える。この報告では、プラトンの演劇論とルソーのそれの比較を行った。コメントでは、このテーマにおける重要な先行研究に対するさらなる考察が必要であることが指摘された。 (2)投稿論文「劇場から街頭へ:プラトンとルソーの演劇論にかんする考察」:上記(1)での口頭報告原稿に、コメントを踏まえた加筆修正を施して論文として投稿した(計画(B)論文執筆の「模倣について」に対応)。不採用ではあったが、古代ギリシアにおける「演劇」のあり方を原典に即して十分に検討しない限り、それを18世紀フランスの演劇とともに論じることは困難であるという重要な指摘をいただいた。それゆえ、短絡的な比較の前に、再び古代ギリシアにおける演劇の文脈を考察する必要があることに気づいた。 (3)投稿論文 “Forms and Images: Reconsidering the Discourses on the Likeness”:課題(B)に対応する成果として、2019年度の学会での口頭報告原稿に加筆修正を施して論文として投稿した。プラトンの後期哲学における形而上学を扱ったこの論文は、上記(2)に対するコメントに応えるためにもさらなる検討を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の申請時には、採用二年目に以下の三つのことに取り組むことを計画していた。(A)ルソー研究:『演劇についてのダランベール氏への手紙』を中心としたルソーの著作の読解と検討。(B)論文執筆:研究課題として設定した (a)「ミメーシス(模倣)としての演劇についてのプラトン、アリストテレス、ルソーの見解についての考察」と、 (b)「喜劇がもたらす情念と笑いについての考察」 に即して、二つの論文を執筆する。(C)発表と論文執筆:課題 (c)「劇場という場に集う観客についてのルソーの見解の検討」ついての口頭発表を行った上で論文を執筆する。 研究自体としては、これら当初の計画に照らしておおむね順調に進展していると言える。特に、演劇論をテーマとしたルソーとプラトンの関係についての論文を口頭報告し、コメントを得、さらに一本の論文として仕上げた点では順調である。しかしコロナ禍において研究会などに参加することが難しく、当初計画していた、18世紀の政治思想についての研究会や勉強会に参加することができず、研究の進展に影響が出た。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、古代ギリシアにおける音楽理論(プラトンや擬プルタルコスなど)とルソーの音楽にかかわる著作から、演劇による情念の喚起について考察する予定であった。この課題については、2020年度には不採用であった論文に加筆修正を加える際に取り組みたい。具体的には、9月(あるいは翌年3月)に開催予定の政治哲学研究会で「研究実績」(2)の口頭報告を行い、その後コメントを踏まえて論文として投稿する。 さらに、2020年度の研究で明らかになった、古代ギリシアにおける「演劇」のあり方の原典に即した検討が不十分であることは、当初の研究計画には含まれないものではあるが、今後の研究において重要になるため、これを2021年度の研究課題のひとつとして取り入れる。他に、9月に日本政治学会で「プラトンの規範的政治理論の(不)可能性」というタイトルで研究発表も予定している。 今年度も引き続き、コロナ禍ゆえに研究会などでの研究者同士の対面交流が難しいことが予想されるため、オンラインでの研究会や勉強会の機会を積極的に利用したい。
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