研究実績の概要 |
本研究は,日本の沖合に分布する希少性の高いクロアシアホウドリを対象に,採餌における重要海域と漁業活動による影響が大きい場所を,バイオロギング技術(GPS記録計とビデオ記録計)を用いて明らかにすることを目的としている.具体的には,詳細に記録された採餌行動から,自然の餌を頻繁に食べる海域と,漁業活動への依存度(漁業餌の採餌頻度と滞在時間)が高い海域を特定することで,特に保全の優先度が高い海域を抽出し,マップ化する.さらに,自然餌と漁業餌を食べた場所の海洋学的特徴を衛星・地理情報データから抽出し、それぞれの成立要因を明らかにする.2021年2-3月にかけて伊豆諸島鳥島で繁殖するクロアシアホウドリを対象とした野外調査を実施することができた.育雛中の親鳥13羽にGPS記録計とビデオ記録計を同時に装着し,8羽から回収した.クロアシアホウドリは主に鳥島北部の伊豆諸島沿いの海域を利用しており, 中部地方から関東地方の沿岸まで採餌に出かけていた.この傾向は2019年度と2020年度の両年で見られた.腹部に装着したビデオ記録計によって, 多くの個体が着水中に死んで浮いている頭足類や魚類, 魚卵を食べていることがわかった.鯨類の死体に誘引された個体や,海洋ゴミや船との遭遇記録も得られた.今後, 採餌海域と漁船との遭遇場所を抽出し, それらの海域の年変化や形成要因を解析する.
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