研究課題/領域番号 |
19J01276
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
松村 貴史 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 男性不妊 / 精子形成 / 器官培養 |
研究実績の概要 |
男性不妊のメカニズム解明に役立てるため、本研究では、マウスにおいて確立された精巣の器官培養によるin vitro精子形成系をヒトへ応用することを目的としている。 本年度は2例の性適合手術から得られたヒト精巣サンプルについて、マウスの精巣培養と同様の培養液と培養環境にて培養を行ったが、未分化な生殖細胞を効率よく分化させるには至らなかった。 そこで、ヒト同様にマウスと同等の培地では精子形成を誘導できていないラット精巣組織の培養も並行して行い、様々な動物種でのin vitro精子形成系を確立するために重要な知見を得ることに取り組んできた。実験には、Haspin-Venus Tgラットを用いた。このラットの精巣を培養し、緑色蛍光により精子形成を培養中にモニタリングし、組織学的に評価した。 マウス精巣培養における重要因子であるAlbuMAXの添加量を検討し、テストステロン等のホルモン類や、抗酸化剤などの添加を検討した結果、減数分裂後期まで効率よく生殖細胞を分化させることに成功した。PDMS素材のデバイスの使用により、ごく一部の精細管内には初期の円形精子様の細胞を認めることにも成功するなど、培養環境の最適化についてもいくつかの知見が得られている。 これらの結果は今後ヒト精巣の培養系を確立する上でも応用できる知見である。現在、ラット精巣組織培養の結果をまとめ、論文発表の準備をしている。これら成果の一部は、第24回日本生殖内分泌学会学術集会において筆頭著者として口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス精巣組織や、ヒト同様に未だ体外で精子形成を誘導できていないラット精巣組織を用いた検討から、いくつかのホルモン類や抗酸化剤、脂質が体外での精子形成誘導を促進する効果があるという知見が得られた。さらに、PDMS素材のデバイスの使用など培養環境の最適化も進んでいる。今後これらの知見を応用することで、未分化なヒト生殖細胞を効率よく分化させることが可能であると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト精巣は新鮮な組織を使用できる機会が限られているため、精巣組織の凍結方法が非常に重要である。マウスや、減数分裂後期までの精子形成を誘導できるようになったラットを用いて凍結法の評価を行い、最適化を図る。またマウスやラットのように蛍光で精子形成をモニターすることができないヒト精巣の培養中の評価法についても模索・検討していく。 また、ラットについても伸長精子までの分化を誘導する系の確立を目指し培養を続けていく。
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