研究課題/領域番号 |
19J01318
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
津田 喬之 近畿大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | 膵癌 / エピジェネティクス / SWI/SNF / BRG1 |
研究実績の概要 |
申請者は、SWI/SNFクロマチンリモデリングコンプレックスの主要構成分子Brg1が、膵癌においてどのような役割を果たすかにつきin vivoで検討し、創薬につなげることを目的としている。 本年度は、PanINを自然発症し、かつ任意の時期にタモキシフェン投与によりBrg1を欠失させることができるPdx1-Flp; FSF-KrasG12D; FSF-Rosa26CreERT2; Brg1f/f マウスを作成し、PanINが形成された後にBrg1を欠失させ、PanINの維持、進行におけるBrg1の役割を評価した。タモキシフェン投与後2週間、2カ月の時点においていずれも、Brg1欠失群においてPanINの数が1/8程度まで減少していた。さらに、Brg1欠失群において残存していたPanINの80%程度はBrg1免疫染色陽性で、Brg1の欠失を免れたエスケーパーであることが明らかになった。さらに、タモキシフェン投与後3日のマウスの膵組織においてCleaved Caspase3染色を行ったところ、Brg1欠失群においてアポトーシスが有意に増加していることがわかった。 上記実験により、Brg1はアポトーシスの制御を介しPanINの維持・進行に必須であることが明らかになった。 次いで膵癌形成後のBrg1の役割を明らかにするため、膵癌を形成し、かつ任意の時期にBrg1を欠失させることができるPdx1-Flp; FSF-KrasG12D; Trp53+/-; FSF-Rosa26CreERT2; Brg1f/f マウスを作成した。同マウスに膵癌が形成された後にBrg1を欠失させ、同一マウス個体内でBrg1の欠失前後での腫瘍径の変化を経時的に評価中である。 また、ヒト膵癌細胞株においてBrg1をsiRNA/shRNAをもちいてノックダウンすることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに膵前癌病変PanINを自然発症するマウスモデルで、PanINを形成後にBrg1を欠失させることにより、Brg1がPanINの維持に必須であることを見出している。さらに、膵癌を自然発症するマウスモデルで膵癌が形成された後にBrg1を欠失させる実験も開始している。また、ヒトへの応用を目標に、ヒト膵癌株においても、shRNAを用いたBrg1のノックダウン実験を開始しており、すでに効率的なノックダウンクローンを作成済みである。これらの進捗状況はおおむね研究計画書通りであり、順調に進捗しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度確立したマウスモデルを用い、膵癌におけるBrg1の果たす役割をin vivoで評価する。マウス膵癌におけるBrg1の役割をより詳細に検討するために、Brg1を欠失させる前のマウス膵癌から細胞株/オルガノイドを作成し、浸潤能、転移能などを詳細に評価する予定である。また、Brg1欠失前後の網羅的遺伝子発現解析を行い、Brg1欠失によりどのようなpathwayに変化を生じることによりphenotypeが形成されるのかを明らかにする。また、すでに樹立したBRG1ノックダウンヒト膵癌株を用いて、ヒト膵癌においてBrg1が果たす役割がマウス膵癌と同様であるかを評価する。さらに、合成致死性の概念を用いたBrg1ノックアウト/ノックダウン膵癌に特異的な治療標的についても検討していく。
|